Epilogue:ポストマン
シティの賑わいが遠く聞こえる郊外。
喧噪と入れ替わりに学者の耳に入ってきたのは、ベルの音色だった。
見事な穂を奏でたベルリカの畑に、ブラザーベルの家は包まれていた。
そよ風に撫でられ、心地よい音色がなる中、学者は兄を呼んだ。
★
-兄さん。
-お前…。
-…久しぶり。退院してたんだね。
-…少し落ち着いてな。
-…そこ、座っていい?
-ああ、遠慮するな。どうやってここまで?
-あの子たちのおかげさ。
-あれは。まさか…。
-ううん。違うよ。新しく出会った子なんだ。
-…そうか。
★
-懐かしい味だな。この控えめな甘さも相変わらずか。
-お茶もあったんだけど、そっちは飲んじゃってさ。
-そこまで贅沢は言わんよ。
-…聞きたいんだけどさ。
-何だ?
-どうしてポストマンになったの?
-いつか、お前宛ての手紙を届けたくてな。
-そうなんだ。でも、兄さんからの手紙が先に来ちゃったね。
-そうだな。情けないことだ。
-…
-…なぁ。
-ごめんね。兄さん。
-え?
-兄さんから借りたものを返そうと思ったんだけど、ここに来る途中で落としちゃったみたいでさ。これだけ袋の中に残ってた。
-…こんなところが外れたりしたのか?
-そうみたいだね。だから、ごめん。
-いいさ。その代わりといってはなんだが…。
-何だい?
-料理の味見をしてくれないか?今回のは今までで一番いい音色に実ったんだ。
-いいよ。本当にいい音だね。
DrEam of RhincoDonella Aruji-no @Aruji-no
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