Episode10:エンハンブレ工場

 学者と少年が向かう先には、巨大な工場があった。

 少年の父が経営している工場で、素材、食料、機械部品に至るまで、あらゆるものが作業機械と管理者たちの元に生産されている場所だ。



-聞かないんだね?

-何がだい?

-僕が何であんなことをしたのかってことをさ。そういえば、僕があの場所にいた理由もちゃんと話してないよね。

-興味がない訳じゃないさ。ただ、分かったんだよ。わたしと同じだったから。

-学者さんと?

-そうさ。許せないこころと許されたいこころが詰まって、何もできないのを周りのせいにして逃げていた。そんなところがね。

-…星のせいにしてはいけない?

-偉そうに言ったけど。わたしもそれをしてたんだよ。この子がまた来てくれるまでね。

-会いに行くだけなのにそこまで悩んだの?

-いや、会いに行くだけじゃないんだ。わたしにも、謝らないといけないことがあるし、謝ってほしいことがある。それ以上に、彼に恐れられてないかと、それを知るのが怖いんだ。

-何かしちゃったの?

-そうだね。お互いに、とても許されることじゃないことをね。

-…お見舞いに来ただけなんだよね?

-…さぁ、着いたよ。



-ここまででいいのかい?

-うん。あとは僕だけでやる。できるから。

-お別れだな。

-会えて良かったよ学者さん。楽しかった。

-わたしもさ。

-…そういえば。

-何だい?

-学者さんの荷物。いつの間にか減ったよね。落としたの?

-…いや、そうじゃない。

-じゃあ、捨てたの?

-そうなるな。きみのおかげだよ。

-どういたしまして。お兄さんと仲良くね。

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