Episode9:エトワール病院

 スターシティ中心部にある星都エトワール病院。

 敷地内にはヒトだけでなく、コメンタなどの他生物を診る診療所も併設されている大型病院だ。

 ワビ師狩人の案内で到着した学者と少年だが、あいにく学者の兄の方は既に退院してしまった後だった。



-お待たせしました。

-おかえり。

-あの患者さんと何か話してたんですか?

-うん。兄のことをね。

-お知り合いのヒト?

-そうみたいだ。受付で僕が兄の名を出したのが聞こえたらしくてね。以前、兄の上司だったらしい。

-そういえば、お兄さんは何の仕事を?

-ポストマンらしいよ。僕も今日初めて知ったんだ。ブラザーベルって呼ばれてるらしい。

-ベル?

-手紙を入れた鞄に小さなベルを付けてるかららしい。それで、彼が来るのが分かるんだそうだ。仕事にとても真摯で、ちょっとした有名人みたいだよ。…悪くないもんだね。

-何がですか?

-誇れる家族がいるってことがさ。兄は違ったろうけどね。

-…。

-それで、お父さんとは話せたかい?

-はい。分けてくれたフールセックのおかげです。

-気に入ってもらえたのかな?

-少し、甘さが足りないと言ってました。



-そんな長い事会ってなかった訳じゃないのに。最初は別人かと思いました。あんな気丈で頑固だった父さんが…。

-原因は工場ではなかったんだろ?

-はい。それも僕のせいです。工場の立て直しも人任せにして僕のことを探し回ってたみたいで。

-まさか、シティの外に出てたとは思わなかった訳だ。

-とてもびっくりしてました。そのあと、謝ってきたんです。

-お父さんが?

-今度は僕がびっくりしました。父さんが頭を下げて謝るとこなんて初めて見たので。

-何に対してのお詫びだったのかな?

-僕をいつまでも子どもと思ってたことにみたいです。家を飛び出したとしても、どうせ遠くに行くことなんてできないと考えてたんです。

-しかし、探せどシティのどこにも見つからず、本気で取り乱してしまったか。

-そうみたいです。身体を壊す程心配させて、ごめんじゃ済まないような迷惑もかけたのに、すごいなって、褒められちゃいました。

-でも、あまり喜んでないように見えるな。

-そんなことはないですよ。ちょっと悔しかったんです。

-どうしてだい?

-病室に入る前に決めてたんです。許してもらえなくても、ちゃんと謝ろうって。そしたら、先に言われちゃって。僕も父さんと同じです。父さんがそんなことするわけないって、決めつけてました。

-親子じゃないか。

-…ふふ。そうだね。

-この後はどうするんだい?良ければ家まで送るよ。

-実は、もうひとつ行きたいとこが。謝りたいひと達がいるんだ。

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