Episode9:エトワール病院
スターシティ中心部にある星都エトワール病院。
敷地内にはヒトだけでなく、コメンタなどの他生物を診る診療所も併設されている大型病院だ。
★
-お待たせしました。
-おかえり。
-あの患者さんと何か話してたんですか?
-うん。兄のことをね。
-お知り合いのヒト?
-そうみたいだ。受付で僕が兄の名を出したのが聞こえたらしくてね。以前、兄の上司だったらしい。
-そういえば、お兄さんは何の仕事を?
-ポストマンらしいよ。僕も今日初めて知ったんだ。ブラザーベルって呼ばれてるらしい。
-ベル?
-手紙を入れた鞄に小さなベルを付けてるかららしい。それで、彼が来るのが分かるんだそうだ。仕事にとても真摯で、ちょっとした有名人みたいだよ。…悪くないもんだね。
-何がですか?
-誇れる家族がいるってことがさ。兄は違ったろうけどね。
-…。
-それで、お父さんとは話せたかい?
-はい。分けてくれたフールセックのおかげです。
-気に入ってもらえたのかな?
-少し、甘さが足りないと言ってました。
★
-そんな長い事会ってなかった訳じゃないのに。最初は別人かと思いました。あんな気丈で頑固だった父さんが…。
-原因は工場ではなかったんだろ?
-はい。それも僕のせいです。工場の立て直しも人任せにして僕のことを探し回ってたみたいで。
-まさか、シティの外に出てたとは思わなかった訳だ。
-とてもびっくりしてました。そのあと、謝ってきたんです。
-お父さんが?
-今度は僕がびっくりしました。父さんが頭を下げて謝るとこなんて初めて見たので。
-何に対してのお詫びだったのかな?
-僕をいつまでも子どもと思ってたことにみたいです。家を飛び出したとしても、どうせ遠くに行くことなんてできないと考えてたんです。
-しかし、探せどシティのどこにも見つからず、本気で取り乱してしまったか。
-そうみたいです。身体を壊す程心配させて、ごめんじゃ済まないような迷惑もかけたのに、すごいなって、褒められちゃいました。
-でも、あまり喜んでないように見えるな。
-そんなことはないですよ。ちょっと悔しかったんです。
-どうしてだい?
-病室に入る前に決めてたんです。許してもらえなくても、ちゃんと謝ろうって。そしたら、先に言われちゃって。僕も父さんと同じです。父さんがそんなことするわけないって、決めつけてました。
-親子じゃないか。
-…ふふ。そうだね。
-この後はどうするんだい?良ければ家まで送るよ。
-実は、もうひとつ行きたいとこが。謝りたいひと達がいるんだ。
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