Episode8:スターシティ

 ワビ師狩人は、かつて少年の父が経営する工場で働いており、そこの従業員から少年は坊ちゃんという愛称で慕われていた。事情を隠したい少年を察して、学者がその場をうまくごまかし、自分がここに来た目的に話題を移した。学者の事情を聞いたワビ師狩人は、自分の久々のシティ巡りも兼ねて、彼らを兄が入院している病院まで案内してくれるという。

 ワビ師狩人の案内で辿り着いたスターシティの中心地は、今が夜であることを忘れる程に星灯りに満ちた場所だった。大きく開かれた通りには、歩道の他にコメンタ用の道も伸びており、ひしめき合うようにヒトとコメンタが行き交い、賑わっている。その中では、アンドンの存在も目立たないのか、奇異の目で見てくる者は少なかった。

 案内をする最中での他愛もない会話の中、少年の父も入院していることを二人は知った。



-彼のお父さんが?

-前にシティから戻った仲間が噂を聞いたみたいでして。体調を崩されて入院したとのことです。

-同じ病院にいるとはまた奇妙な縁だね。せっかくだ。一緒にお見舞いに行かないか?

-え?

-いいと思いますよ。工場長も喜ぶと思います。

-それはどうですかね…。

-…ところであなたも、以前はその工場にいたのかい?

-自動化される前までですがね。

-自動化?

-作業機械の導入のことです。それがきっかけで、多くの作業員がやめることになりました。

-それからワビ師狩人に?

-どうやら素質はあったみたいで。やりがいも感じてますよ。おまけにその後に起きた事故のことを考えると、何とも皮肉に感じます。

-事故?

-これも噂ですが、かなり大きな事故があったと聞きました。坊ちゃんもその時は大変だったでしょう?

-え、ええ…。

-時期はズレてますけど、工場長の入院もそれが原因だと言われてるみたいですね。

-事故の原因は分かってるのかい?

-それが不思議な話でして。未だにはっきりしたことが公表されてないらしいんですよ。

-え?

-それは確かに不思議だね。

-でしょう?坊ちゃんは何か知ってませんか?

-…うん。知ってるよ。僕がやったんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る