Episode7:ハーヴェストゾーン

 スターへイルをしのいだ学者と少年は、ようやくスターシティの大星領スポットへと到着した。

 シティを照らすスタースポットは街以上に広大なため、目指すシティの姿はまだ遠くにあった。

 一休みしようとする二人をひとりの男が呼び止めた。

 その男は自分をワビ師狩人と名乗った。

 ワビ師狩人とは、大量の作物をその身に生やした巨躯有する生物ハイグイから必要なだけの食料を採取することを生業とする者のことだ。彼が言うには、もうじきここをハイグイの一種が通り過ぎるとのことで、安全な場所へと学者と少年を案内した。

 しばらくして彼の宣言通り、ダークゾーンの中から星灯りの元に現れたのは、巨大な身体をノソノソと進ませる四つ足の生物が現れた。

 ワビ師狩人はその生物を「カンポ様」と呼び、祈りを捧げるような仕草を取った後に近づこうとした。



-銃を使ったりするのかい?

-まさか。使うのはこれだけですよ。

-鎌。農耕用の?

-ええ。必要なものを必要なだけ。すぐに終えます。そこを動かないで。



-ありがたく、いただきます。

-あの、お怪我はありませんか?

-大丈夫ですよ。

-すごいね。遅いとはいえ、動いている生き物をあんなに軽々とよじ登るなんて。

-ワビ師としては当然です。

-さっきの所作は?

-カンポ様含めたハイグイに捧げるワビ教の祈りです。

-そういう教えがあるのかい?申し訳ないけど、僕の身近にはないものでね。

-ごく小さな集まりですから。それにシティの中心部の方では、このような形で日々の糧を採る事自体理解されなくなってきてますし。

-そうかな?多少危険はあるだろうけど、理解と敬意に満ちた様式に見えたけどね。

-僕もそう思います。

-そう言っていただけて嬉しいです。過去にはこれを非効率の一言で切り捨てた人もいましたから。

-ギアとオイルの理論ですか?

-何だいそれは?

-整然で効率的な仕組みのために、個人をないがしろにした考え方です。僕の父なんかまさにそれの典型のような人で。

-…あの。

-はい?

-もしかして、坊ちゃんですか?

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