勿忘草（わすれなぐさ）を置き去りに【俳句・二十句部門】

幸せ いづこ

　現実（うつつ）には　白（しろ）き芍薬（しゃくやく）　露（つゆ）と消（き）え

　カキツバタ　つまなき　いまを　誰（だれ）と添（そ）う

　初（うい）し日（ひ）に　はじらうものは　鈴蘭（すずらん）や

　流（なが）る歳月（とし）　待（ま）つとしきかば　胡蝶蘭（こちょうらん）

　思（おも）ひ（い）出（で）を　なぞり　嘲笑（わら）うは　ドウダンツツジ

　手折（たお）れずに　咲（さ）き続（つづ）けるは　山桜（やまざくら）

　雛菊（ひなぎく）に　くちよせ　祈（いの）る　きみ　こひし

　クロッカス　早（はや）く見（み）つけて　つかまえて

　姫（ひめ）りんご　ひとくち　かじり　戻（もど）れない

　かつてなら　喜（よろこ）び秘（ひ）めて　青（あお）きバラ

　あなたには　高嶺（たかね）の花（はな）と　知（し）る　桔梗（ききょう）

　風（かぜ）なくも　揺（ゆ）れる薔薇（そうび）は　黄（きぃ）かしら？

　蝶々（ちょうちょう）の　行（い）く先（さき）　白（しろ）く　鬱金香（うっこんこう）

　勘違（かんちが）い　それでもいいの　水芭蕉（ミズバショウ）

　ひとこひし　芝桜（シバザクラ）なら　頷（うなず）いて

　カスミソウ　霞（かす）んで見（み）えず　掴（つか）めない

　望（のぞ）まぬも　扉（とびら）を叩（たた）く　キンセンカ

　孔雀草（クジャクソウ）　知（し）らないままで　いたかった

　涙（なみだ）飲（の）み　カミツレの如（ごと）　咲（さ）き誇（ほこ）れ

　白菊（しらぎく）よ　きかせておくれ　墓前（ぼぜん）でも