ガラスの王国(24時間営業)

花森遊梨(はなもりゆうり)

王の石(九万円)と小さな王国

「これは王の石ですよ」

4月の中頃

カナリーイエローの石を差し出しながら浅黒い肌の男は言った。


「イエローダイヤモンド、所有すればみんな所有者を盛り立てて『王』にしてくれる。そう称される最強のパワーストーンです」


これは運命の出会いだった。


これが東南アジアであること。そのイエローダイヤモンドは九万円のガラス玉だったことでなければだ。


今考えれば「王の石ですよ」とわざわざ日本語を駆使して言う事自体、非常に怪しいと思うのだが、東南アジアの人なのに日本語を操るとはと感心までしたものだった。



5月 立夏

昼下がりのバイト先

「死にやがれクソガキ!」


目の前の男ー本日5人目の強盗ーがホルスターから銃を引き抜く。構えるより早く正拳を鼻面に叩き込む。ぐしゃりと鼻が潰れた感触と共に、膝で股間を突き上げる。何かが潰れた。感慨は何もない。そのまま後ろに倒れる強盗の喉に蹴りを入れ、首の骨が砕けた手応えを足裏で感じた。強盗は動かなくなった。


トラブルは解決した。だが休憩をしている暇はなさそうだ。


「いらっしゃいませ!死体は気にせず、3番レジへどうぞ!」


カナリーイエローのガラス玉の力かどうかは不明だが、コンビニの王にはなれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ガラスの王国(24時間営業) 花森遊梨(はなもりゆうり) @STRENGH081224

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ