第6話 まだらのチューリップ

まだらのチューリップ姫は、髪は赤や黒、白

金色でちりちりでした。

顔はソバカスだらけ。

華奢なからだにブカブカの左右、前後の長さがまちまちのごわごわしたシャツと緑色のズボンを履いていました。


花屋さんのお店には、まだらのチューリップ姫だけが残っていました。


「あらあら、なあに?

しょげてるのかしら?

あなたはね、特別なチューリップなのよ。

さぁ、これからあなたを必要としている人達の所へ行きましょうね。」

小さなお花屋さんは言いました。


車に揺られながら、まだらのチューリップ姫は考えました。

「白いチューリップ姫さん、妖精のように綺麗だった。

黄色のチューリップ姫さん、みんなを笑顔にしちゃう。

赤いチューリップ姫さん、大人の落ち着きと

気品に溢れてたわ。

ピンクのチューリップ姫さん、可愛くて、

女の子の憧れよね。

私は、どうなのかな?

まだらの花びらはとても美しいとは言えない。

おまけに、茎が細っこくて、、、。

だから、花も小さい。

だから、だあれも見向きもしてくれなかった。

私は特別ってどんな風に?

おかしいな花ってことかなぁ。

いやだな、私を見たら、みんな笑うわ。

こんな、おかしなチューリップは見たことないって、、。」


そうこうしているうちに車はある建物に止まりました。

まだらのチューリップ姫はからだを固くして

身構えました。

お花屋さんは、鼻歌まじりで鉢を抱きしめて

スキップしていました。


「こーんにはーーー!」

お花屋さんが扉を開けて挨拶をすると

そこには、沢山の子供達がいました。

そして、お花屋さんの抱きかかえている

まだらのチューリップ姫を見た途端に

歓声が上がりました。


その言葉はチューリップ姫が初めて書くものでした。

わらわらと子供達はお花屋さんを取り囲みました。

まだらのチューリップ姫は子供達を見て

驚きました。

肌の色も髪の色も目の色も違っていました。

話す言葉も違っていました。


「みんなはね、あなたの事をね、

私達みたいって言ってるわよ。

ここにいる子供達はね、住んでた所が

戦争でね、壊されたしまったの。

地球の色んなところから、ここに来たのよ。

だからね、あなたと同じ。

ほら、みーんな違うでしょう?

みんなはね、ひとりになって自信を無くしてるのよ。

さあ、あなたの出番よ。

みんなと一緒にいてあげて。」



まだらのチューリップ姫のまわりには

子供達が集まって、いろんなお話を聞かせてくれました。

家族の話や学校の友達、故郷の山や海のこと。

戦争がとても怖かったこと。

まだらチューリップ姫は、知らない世界を

聞かせてくれる子供達が大好きになりました。


「みんな、私が知らない事を教えてくれてありがとう。

一緒に私は私って行きて行こうね。

私はどれだけ世界が大きくたって、たったひとつの命なんだから。」


まだらチューリップ姫は、強くなったみたいですね。



おしまい。










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