第4話 嵐の日曜日

<その4>嵐の日曜日


タチバナさんのおウチは大家族でした。


おじいちゃん…おばあちゃん。

お父さんお母さん…中2のお姉さんに中3のお兄さん。

小2の弟に4歳の妹…2才のオスの柴犬と1才のメスの猫。

そして…インコと金魚とサボテン。

どうしましょっ。

私の家族とはまったく逆の…おウチの中が声だらけで…シーン…が30秒もアリマセン。

右から左から前から後ろから…マシンガンのように声が聞こえてきます。

そうかっ。

だから…タチバナさんはハキハキしてるんだなあ?…と…思いました。

なっとくです。


(自分のおウチだと思ってゆっくりしてってねっ)て…言ってくれたご両親。

ありがとうございます…あまえさせていただきます。

(せまいけど…おフロはいってねっ?)て…おばさんが言ってくれたら…続けて。

(野花ちゃん?いっしょに入ろっ?…ね?)って…タチバナさんが言うと。

(あたしもお〜〜)って…中2のお姉さんが言ってきて。

(ええーっ?アタチもお〜〜)って…4歳の妹さんも声をあげちゃうし。

(あんたたちっ。やめなさいっ。ムリに決まってるでしょっ?)て…お母さん言うけど。

あららあ〜〜っ。

けっきょく4人で…ギュウギュウで入ることになりましたっ…ふふふ。

わいわいガヤガヤ…コトーンカターン♪…バシャバシャバシャーン♪…と。

小さなおフロで女子4人…くっつきながらオシャベリしながら…楽しいなあっ。

ちょっと(はしゃぎ)すぎちゃって……。

(あんたたちっ。プールじゃないんだからねえっ。洗ったら…スグ出てちょうだい‼︎)

…って…おばさんのカミナリがおちました…ほらね?


おフロあがってタオルで髪をフキフキして…かるく4人でドライヤーかけあって。

タチバナさんのTシャツと短パンかりて…そして。

夕食ですっ。

スゴいんですスゴいんです…お茶わんとお皿の数っ…こんなの見たことないないっ。

テーブルも2台ならべてくっつけて…炊飯ジャーも2台ならべて置いて。

さすがは大家族っ…毎日こうなんですねええ…大変だっ?おばさん……。

タチバナさん…ちゃんとみんなのゴハンよそってるし…なれた感じでテキパキしてる。

えらいなあぁ……。


(いただきまあーーっす‼︎)…って。

私をいれて10人でねっ…笑顔の大合唱してから…いっせいにハシをもって食べました。

手作りのボリューム満点の最高のハンバーグでした。

お味噌汁も…おいしいいっ。

サラダも…おいしいいっ。

おばさん手作りの漬け物も…おいしいいっ。

なにより…和気あいあいのタチバナさんの家族があったかくて…最高でした。


家族のみなさんねっ…いろいろと私に話しかけてくれました。

私を中心に食事や会話が進むように…ふつうに自然にふるまってくれました。

私に…不安や(えんりょ)を感じさせないようにしてくれました。

そして…同じ家族の一員のように自然にせっしてくれました。

タチバナさんやご家族のみなさんっ。

本当に本当に…ありがとうございます。

感謝しかないです…心からうれしいし楽しいです。

人のぬくもりって本当にありがたいです。

いま…とっても…幸せな私ですっ。


ハシとお茶わんもったまま…ちょっとね?…センチメンタルディナーしてたらね?

タチバナさんがね?

(野花ちゃん?…だいじょうぶ?)…って…さっしてくれてね?

(うん…うん。ありがと。おいしいね?…ごはん。おいしい…)って…わたし答えたの。

そしたら…おばさんが。

(野花ちゃん…がんばってる。いい子だもん。私たち…応援するからねっ)…って。

そしたら…おじさんも。

(体だけは気をつけるんだよ?いっぱい食べてグッスリ寝て…元気だしてっ)…って。

それから。

お兄さんもお姉さんも弟さんも…私に…はげましの言葉をいっぱいくれました。

おじいちゃん…おばあちゃんも言ってくれました。

(こっちに来たらっ…いつでもよりなさい?とまっていきなさいねっ?)…って。

一番下の4歳の妹さんには。

(野花お姉ちゃん?いっしょにねようねっ?ゆびきりげんまんっっ)…って…ねぇ。

わたし。

妹さんのイスまでいって…横でしゃがんで…ゆびきりげんまんっ…♫…しました。

小さなやわらかい指で歌ったらねっ…ちょっぴり…泣けちゃいます…♫…シュン。


今夜はキレイなお月さん。


いつもは。

タチバナさんと中2のお姉さんの二人の部屋に…私も寝かせてもらうことになりました。

そしたら…ね?

(ゆびきりげんまん)の4歳の妹さんも…ぜったいぜったいのお約束なので…ね?

けっきょくねっ…四人で…せまくなるんだけど…仲良く寝ることになりました。

なかよし女子…四人組です。

二段ベッドにタチバナさん上…お姉さん下…床にはお布団をギュギュッとしいて。

そこに私とかわいい妹さんが…ゴロロンと仲良くならんで寝ました。

4歳の妹さん。

眠かったのかなあ?…アッというまにグ〜グ〜♪しました…ふふっ…かわいいです。

大家族って…いいですねえ〜〜。


お姉さんが電気を消すと…。

キレイな白い月のほのかな明かりが…カーテンごしにすけて入ってきました。

タチバナさんが…弱い月あかりがソッとあたる二段ベッドの上から…小声で言いました。

(野花ちゃん?…友だちだよ?ずっとずっと…友だちだよ?)…って。

(うん。ありがとう。友だちです。ずっと友だちですっ)…って…わたし答えたら。

お姉さんもねっ…ウンウンってうなずいてくれました。

そうして四人で眠りにつきました。

私は…妹さんとゴッツンコしながらも…深い眠りに落ちました。

夢は…見ませんでした……………。


♫……♪…♫……♪♪(なってる〜〜っ⁉︎)


まぶしいい…朝っ。

めざまし時計をとめる前に…柴犬のウータンがツツツっと入ってきました。

私が気になるらしくて?…私の寝ボケた顔をペロペロなめて起こしに来てくれました。

4歳の妹さんの体の上を元気に歩くので(ウータ〜〜ン?)って…お尻をたたかれても。

妹さんの体の上をねっ…元気にムズムズふんづけては…ふんづけてはっ。

私の顔をペロペロなめる元気なウータンでした。

ウータン……ほんとは(捨て犬)だったそうです。

ひき取った頃は誰にもなつかず…(ウ〜ウ〜)って…うなってばかりいたんだそうです。

それで名前が(ウータン)になったそうです。

今は元気で明るい…頭のいい柴犬ウータンです。


そのウータン。

渋谷のハチ公…みたいなところがあって。

朝…家を出る時には玄関で見送ってくれたり…午後…下校で校門を出るとねっ?

いるんですっ。

ニッコリ笑って(おすわり)してるんですっ…ウータンっ…えええっ⁉︎って。

タチバナさんもねっ…あきれちゃって笑っていました。

(こんなの…はじめてよっ?)…ってタチバナさん。

(きっとウータン。野花ちゃんのこと…大好きなのねえぇ)…って言ってくれて。

ウータンもその気まんまんらしくて…シッポをふっては…笑ってクンクン♪してました。

かわいいなあっ…かしこいなあっ…ウータンっ。


そうそう…。

さっきのクラス会でね…決まったの。

今週は…タチバナさんのおウチに…続けて(おとまり)することになりました。

毎日…毎日…場所を変えるのは私が気をつかって大変だよね?…と…いうことでした。

担任の先生も…それを聞いた校長先生も同意見でした。

ありがとうございますっ。

私は一人でも…一人じゃないんですね?…って…そう…思いました。

二日目火曜日の学校も楽しく終わって…ウータンとタチバナさんとの帰り道でした。


また…いました。

あの…口笛の…大きな男の人です。


おだやかな波の砂浜で一人…10羽ぐらいの…カラスと海ドリとスズメと遊んでる⁉︎

口笛をふいて鳥たちと遊びながら?…本当に…会話してるようにも見えるんです。

でも…ぜんぜん…楽しそうじゃない。

笑顔がありません。

あやつられてるようにグルグル飛びまわる鳥たちを…この人…訓練してるみたい?

(普通じゃないよっ…この人っ… )って…となりのタチバナさんも変に感じてるし。

ウータンは……。

グルングルン上下左右に飛んでる鳥たちが気になってか…ソワソワしてるし。

ねええ…口笛の人っ?

あなたは何がしたいの?…どうしたいのですか?

お願いですっ…みんなに…友達に…変なことしないでくださいねっ?…お願いっ。


水曜日…晴れ…風はナシ。

木曜日…晴れ…風はナシ。

金曜日…晴れのちくもり…風はナシ。

でも明日からは…低気圧が上空にきて荒れる予報です。


今日も…帰り道。

口笛の大きな男っ…一人で砂浜にいました。

鳥たちと遊び会話し調教師のように…訓練?していました。

見た目にも鳥たちと大きな男は…さらに(一体感)がましてきたように感じます。

(やっぱり…普通じゃないよっ‼︎)

と…となりのタチバナさんが言いました。

(野花ちゃん?うわさぁ…聞いたあ?)

(あの人っ…海の家にいるんだってえ〜。ほら?こわれた…あの古い海の家っ)…って。

そうかっ…わかった。

だからっ…砂浜にいつもいるんだ。

わたし…少しはなれて見ていても感じることがあります。

二人と一匹で見ていても…男の視線は…私だけに向いている?

私だけを見ている?……そう…感じることがあるんです。

野生のカンです。


土曜日の朝。

雨が今にもふり出しそうな空…風は少しだけ吹いています。

土曜日の午後。

風がやや強くなり…雨もふってきました。


そして…夜ごはんの時間です。

外からバタバタッ♪と……ビュービューの風でモノがふるえる音が聞こえてきました。

建物にあたる雨つぶの音も聞こえてきました。

天気が…荒れてきました。


でも大家族の食卓は…あいかわらず楽しい時間でした。

今じゃねっ…ゴハンを(よそう)のも私の役目になりました。

(いただきます)も…私が(あいず)を出す係りになりました。

毎日が毎日が…楽しい楽しいワイワイ日曜日みたいでした。


土曜日の真夜中。

低気圧の影響が出てきて雨はどしゃ降りとなり…四方八方の風も強くなってきました。

外は真っ暗で…月の明かりも星の点々も今夜はありません。

天井の豆電灯の下…部屋の三人はぐっすり眠っていました。

でも……わたし。

バタバタッ…バタン…ピュ…ゥウーー…バタバタバタッ…ビュー…ウウーーッ…………

っていう…風の音がイヤでイヤでっ。

ああっ。

9歳のあの日も…こんな嵐だったって…あの時のことを思い出してしまうんです。

だからっ…私っ…うすい毛布かぶって…とりあえず目だけつぶって横向きに丸くなって。

眠ったフリ……してたんです。


そしたら。

私を心配したのかな?…何かを感じたのかな?…さびしくなったのかなあ?

ウータンがねっ。

そろ〜りそろ〜り…(四本の忍び足)で私たちの部屋に入ってきました。

そうして…まよわずに私の枕元に来るとね?

ちょこんと…親友のように…いっしょに(そいね)してくれたんです。

小声で…クゥンクゥン♪って。

わたし…(ウータァン…ありがとぅね? )…て…なでながら小声でささやくと。

ウータンね?

(くぅん…くぅん…♪…)って言いながら…やさしくペロッとなめては答えてくれました。

ありがとう…ウータァン。

心配かけちゃったけど…もう平気だよっ…よしよしっ…よしよしっ…ウータァン。

まわりの三人は…もう…グッスリ熟睡中です。

私もグッスリ…眠れそうです。

おやすみなさい………………………………グ………グゥ……。


嵐の日曜日‼︎

朝から。

地面に建物に…木々や車に…はげしくぶちあたる大つぶの雨と強い風‼︎

ああ……。

なんかザワザワします…ざわつくんです。

野生のカンです。

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