桜散る

糸花てと

『桜散る』

 仕事と家の中間地点に、桜は咲いていた。


 家庭菜園がちょこっとあって、誰かが管理している。


 桜が綺麗ですね、とお邪魔する方法もあったかもしれないけど、いつでも遠めからスマホ撮影をした。

 気づいたら五年目らしい。何年前の今日は、ってスマホが記録してた。


 寒い日が続き、暖かい日が続く。


 たぶん、去年より咲くのが早い。


 今年もまた、同じところから。


 雨が降る日、風が強い日、今年は見れる日数、少ないかもな。


 散ったあとの、地面が桜色になるのも、よかったりするけど。


 腰に気を遣って立ち上がる女性。会釈をされたから、自分も頭を下げた。


「何かご用かしら」

「あ、いや……さ、桜っ……綺麗ですね」

「あらぁ、ありがとう。もっと近くにいらっしゃいな」


 場の流れに流され、桜の真下、もっと早く言えればよかった。結構散ってる。


「今年は天気が荒れる日が多かったからね〜」

「ここの道、割りと近所で、遠くからいつも楽しませてもらってたんです」


 五年分を、女性に見せた。


「来年もいらっしゃいな。いつでも近くで撮ったらいいから」


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