第0話 管理局員の奮闘記

過ぎ去りし夢

 あぁ、なんということだ。

 この世に天国こんなばしょがあるなんて。


 右を見ても左を見ても、小さな体のケモミミキッズ! 見慣れぬ人間に尻尾をフリフリしながら、クリクリな目で私を見上げて……。


 なんということだ。

 可愛い過ぎる。

 飼いたい!


 私は思わず唾を飲み込んだ。


 ――あぁ、いかんいかん! まずは、自己紹介だ。

おおとり すばるです! これからよろしく! 今日はちょっとだけだけど、みんな、仲良くしてね!」


 大人の女が前職で培った営業スマイルをわざわざ繰り出すまでもない。心の底から込み上げる感情に従うだけで生涯一番であろう笑顔を浮かべることができた。私にとって、子供達このけしきはそれほどの絶景なのだ。

 え。今、ケモミミがピクンってした! うわ、耳がこっち向いてる。

 聴いてくれてるんだ! 可愛い!


「スバル! かっけー名前!」


 ケモミミたちが席を立ち、近づいてきた。

 瞬く間に囲まれる。


「はじめまして!」


 間近に、

 ケモミミ、

 ケモミミ、

 ケモミミぃ!

 幸せ過ぎる!


「よろしくお願いしまーす!」

 ――うわ、胸さわってきた! エロガキめ! この耳の形と、クリンと巻いた大きな尻尾は……リス、かな?


「スバル、なんだか良い匂いする?」

 この子は、イヌ? 耳と、前髪もシベリアンハスキーっぽい色。私が軽めに振ったコロンに気がついたのか、小さな鼻を一生懸命スンスンしている。


 可愛い。

 一匹ずつギューってしたい!

 あぁ、駄目になりそう。

 いや、もう駄目になっても良いと思う。

 夢に見たケモミミたちが、モフモフの実物が、目の前で動き回り、しゃべっているんだもん。


 市役所で死にそうになっていた先月とは大違い。

 転職して良かった。


 生きてて良かった!

 生まれてきて良かった!


「スバルー!」

 また胸元でケモミミがピョンピョンする。


 うわああぁ! 動物人アニマン最高~!

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