1-3 表の街
ツバメはスズメ目ツバメ科ツバメ属に分類される鳥類であり、世界を旅する渡り鳥だ。春に
数千キロメートルの距離を渡って国を行き来するこの鳥は、その目で多くの景色を見て、その耳で多くの情報を聞く小さな冒険者であった。
そんな渡り鳥としての特徴を心に宿した
チーターとの待ち合わせ場所である噴水広場は
放課後、
「あれ?」
広場に着くと意外な光景を目にし、そんな声を上げる。
「イヌー! 遅いぞぅ!」
噴水の前でネコが手を振ってきた。彼女の家は
意外だったのは、待っていたのがネコだけではない点だ。
合流したところで二人を順に見る。
それから、その内の一人に質問した。
「フクロウもツバメに会いに行くの?」
問を受けた、髪も肌も白い小柄な少女――フクロウが声はなしにうなずく。フクロウ目フクロウ科の中のミミズク種のように横に跳ねた髪が揺れた。彼女は声が小さいため「うん」と言っていた可能性もあるが、イヌの聴力で聞き取れないはずはないので発声自体なかったのだろう。
フクロウは、腕から翼を広げて空を飛ぶことができた。更に夜目も利き、暗い中の探し物が大得意だ。学年は
「クッキー食べる? 家から持ってきたんだ」
「イヌー! 偉いぞぅ!」ネコは膨れっ面から一転大喜びで少年の手に飛び掛かる。
一瞬、腕ごと捕食されると錯覚した
フクロウは首を横に振った。もちろん彼女は猛きん類のフクロウそのものではないため、肉以外も食べられる。単純にお腹が空いていないのだろう。
「んん~!」ネコが早速クッキーを頬張り、幸せそうな顔でうなった。「うまい!」
大げさな気もするが、
次いで、彼女の喜びようの理由が明かされた。「お腹すいてたんだよなぁ! 待ってる間、フクロウちゃんが美味しそうに見えて仕方なかったんだよ!」
フクロウがチョコチョコと
なんてことを!
「ネコ! 絶対にフクロウを食べちゃ駄目だぞ!」
「わかってるよぅ! 冗談だよ冗談!」
「冗談に聞こえない!」
「おーい、お前ら」
そこで掛けられた声が、やりとりを中断させる。
チーターがやってきた。
「またじゃれ合ってたのか」
「じゃれ合ってないよ! がるる!」
「チーター! 遅いぞぅ!」ネコが挨拶代わりの文句を言う。
「悪いわるい」相手は言葉に反して苦笑を浮かべつつネコ、
フクロウは
友人が腰に手をあてた。「これで揃ったな!」
長身の彼の後方には、もっと大柄な
「クマも一緒か?」ネコが興味津々に耳を動かした。
「おう、面白い話が聞けるってチーターが言うから、来てみたんだ」低い声でクマが言う。
彼は肌の黒い巨漢というフクロウと対称的な体の持ち主だ。その身に宿す動物の特性は、言うまでもなく食肉目クマ科。誰よりも力持ちで、だが意地悪は絶対にしない、
学校一の運動神経であるチーターと学校一の力自慢であるクマは良きライバルである。チーターが「俺よりも鼻が利く」
とにかく、チーターは気の合いそうな
「クッキー食べる?」
「サンキュ!」
「ありがとな!
チーターとクマは勧められたクッキーを迷わず受け取った。想定ではネコ、チーターと自分の三人だったため、三枚しか持ってきていない。自分は我慢しよう。
「私も欲しい!」
「ネコは先に食べただろう! もうないよ!」
「じゃれ合い」はほどほどにして、いざ、裏の街へ。
チーターを筆頭に一行は細い路地へと入っていった。
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