第22話 音楽の絆、未来への橋

桜の下での再会から数ヶ月が経過し、それぞれの道を歩んでいたひなたとカラオケサークルのメンバーたちは、音楽を通じて自分たちの経験を共有し続けていた。彼らは音楽の力が人々を一つにすること、そして時間や距離を超えた絆を深めることを再認識していた。


ある夏の日、ひなたは自身の卒業リサイタルの準備に取り組んでいた。彼はこれを機に、カラオケサークルで育んだ友情と経験を表現する最も重要なステージと位置づけ、心を込めてプログラムを組んでいた。


「このリサイタルで、僕たちの物語を伝えたい。」ひなたがメンバーたちとオンラインで話しているときに言った。


あすか、たろう、さくらもこの大切なイベントに参加するために、それぞれの場所から赤穂市に戻ってきた。彼らはひなたの成長を間近で見守りたいと心から願っていた。


リサイタルの日、会場には多くの観客が集まり、ひなたの音楽学校の教授や同級生、地元の音楽ファンが詰めかけた。ステージ上には、ひなたがこれまでに影響を受けたアーティストやジャンルの楽曲が並び、彼自身のオリジナル曲も披露された。


ひなたはリサイタルを通じて、自分自身の音楽の旅を語った。彼の演奏と歌声は、各曲に込められたストーリーを通じて、聴衆に彼の成長と冒険を感じさせた。カラオケサークルでの思い出やそこで育った友情が、彼の音楽と共に生き生きとした形で表現されていた。


プログラムの最後に、ひなたはステージ上にあすか、たろう、さくらを招き入れ、一緒に「未来への橋」という彼の新しい曲を歌った。この曲は、彼らの友情とこれまでの旅、そして未来への希望を象徴していた。


「音楽は僕たちを繋ぎ、時間や場所を超えてもその絆を保つ力があることを、僕は信じています。」ひなたが観客に向かって話した。「今日ここにいるみんなと共有できて、本当に幸せです。」


リサイタルが終わると、会場からは温かな拍手が鳴り響いた。ひなたとメンバーたちは、その瞬間、彼らがこれまでに築いてきたものが確かに存在することを感じ取り、お互いを見つめ合いながら笑みを交わした。


これがカラオケサークルの最終話であり、彼らの音楽を通じた旅は新たな節目を迎えた。未来に向かって、彼らはそれぞれの道を歩みながらも、いつでも心で繋がっていることを確信していた。音楽は彼らにとってただの趣味を超え、生涯を共にする友となり、新しい未来への架け橋となった。

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ひなたのうた~潮風の吹く街で 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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