大文字伝子が行く271

クライングフリーマン

原田の男気(前編)

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。


 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 原田正三警部・・・元新宿風俗担当の刑事。警視庁からのEITO出向。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 本郷隼人二尉・・・海自からのEITO出向だったが、EITOに就職。システム課長をしている。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向事務官。

 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。

 青山(江南)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 西部(早乙女)愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが、西部と再婚後は、警察を退職してEITOに非常勤勤務。


 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。


 山村美佐男・・・みゆき出版社編集長。伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。


 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。宅配便ドライバーをしていたが、今は、やすらぎほのかホテル東京支配人。

 窪内真二郎・・・窪内組組長。昔、闘って以来、伝子を崇拝。EITOに協力している。今は、『真っ当な渡世』としてテキヤを営む一方、市役所のゴミ収集等、公共事業の下請けをする会社を経営。組員と一緒に社会に貢献している。

 窪内美由紀・・・窪内の娘。教師をしているが、生徒からは、『テキセン』と呼ばれている。


 =================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午前10時。伝子のマンション。

 伝子と高遠が、仲良く洗濯物を干している。

「相変わらず、仲いいわね。ピースクラッカーから、お礼状が届いたみたいよ。あ。チャイム鳴らしたわよ。」と、入って来た山村編集長が言った。

 伝子はスマホのBase bookを起動した。

「EITOの諸君。よくエイラブ系組織の者と、ウチの裏切り者、つまりスパイを一掃してくれた。アナグラムも、あの『謎かけ』も見事にクリアして、対決したんだから。心配しなくても、すぐに対決しないよ。インターバルはお互い必要だろう。今の内に『大型連休』とやらを・・・あ、僕としたことが。ごめんごめん。EITOに休日はないよな。借りは返したぜ。借りたモンは返さないといけないよな。準備が出来たら。また連絡するよ。」

「今回は、少し長かったね。」と、高遠は言った。

「間があった。本郷君に調べて貰おう。」と、伝子はスマホで電話をした。

「取り敢えず、お言葉に甘えて、『平常運転』したら?運転と言えば、一昨日の自転車轢き逃げ犯が捕まったらしいわ。暇なのかしら?ニュースで大きく取り扱ってたけど。」

「それは、編集長。遺族が・・・結局亡くなったんだけど、遺族が賞金出したからですよ。目撃情報提供者に。400万円だったかな?」

「世の中、やっぱりお金、か。世知辛いわね。」と、山村は感嘆した。

「あ。これ。お土産のアイス。高遠ちゃん、冷凍庫に入れといて。」「はい。ありがとうございます。」

「変な噂聞いてね。事件かどうか分からないけど、記憶に留めといて。」「何です?『GERO』の在庫管理がおかしいって。」「GEROって、レンタルビデオ店ですか?日本で2番目に大きい?」「そう。新作ってさ。ある程度経ったら、準新作とか旧作とかになるじゃない?」「そうですね。」「アメコミ映画だけど、新作で並んでた、ファイナルシーズンの分が、棚の模様替えをした後、ごっそり無くなったらしいの。熱烈なファンの、ウチの社員が、すっかり気落ちしちゃってね。泥棒されたんじゃないか?って。」

 伝子がスマホのスピーカーをオンにした。合成音の『隠し音声』が流れた。

「お礼に、時々見え隠れする、我ら共通の敵の名前を教えてあげよう。『ピスミラ』という名前らしい。エイラブ語で[いただきます]の意味だそうだ。」

 午後1時。EITO東京本部。司令室。

「つまり、教えてはやるが、公にするな、って言ってるんですね。」と、夏目警視正は言った。

「言われなくても、公にはエイラブ系、で通すさ。奴らが犯行声明を出して、自己紹介するまではな。」

 伝子は、理事官の言葉を聞いていない、原田に「原田は、これが見たいのか?コレは、スーパーガールのプロテクターだそうだ。正式なプロテクターは、制作中らしい。これで、お前にセクハラされなくて済む・・・冗談はさておき、何を悩んでいる?」と言った。

「はい。実は、新宿署にいたとき、割と親しかった風俗嬢が助けを求めてきていたんです。」「いたんです?過去形か。」と、伝子は呆れた。

「言い出すタイミングがなくて済みません。実は、常連客の1人にGEROの幹部がいて、会社が脅迫されている、って言うんです。その子の言うには、会社が脅迫に応じないなら『強硬手段』に出るらしいんですが、既に実験的に実行されていて、同時多発だと防げないぞ、とも言ってるらしいんです。」

「ちょっと待て。そもそもの脅迫って何だ?」「買収、つまり、『乗っ取り』に逆らわないっていうことです。」

 原田の言葉に、「まるで『グリコ森永事件』の再来じゃないか。」と、理事官は驚いた。

「原田。同時多発って言ったんだな?理事官。間違いなくテロです。同時多発テロです。」と、夏目警視正は言った。

「時期はいつなんだ、原田。」「GWの事を仄めかしていたそうです。」

「分かった。皆で防ごう。渡さん、皆に連絡して下さい。理事官。明日は、24時間営業の支店は,理由をつけて午前9時開店にして貰って下さい。我々も同時防衛だ。場所は・・・草薙さん、売り上げベスト10をピックアップして下さい。」

「了解しました。」「理事官。警察の要請は、その10店に絞りましょう。全ての店舗は守れないから。」「了解した。河野君。警視庁に開店時間変更の要請。それと、SATの出動要請だ。

 翌日。午前9時。渋谷区。GERO千駄ヶ谷店。

 開店すると、青山と美由紀は、他の客と店内に入った。

 AVコーナーに入った2人は、わざと大きな声で会話しながら動き回った。

「ねえ、これなんか、今夜の『おかず』にいいんじゃない?」

「こっちも燃えそうだぜ。お前の好きな・・・だろ?」「やだ!見てる人いるのに。」と言いながら、AVコーナーのあちこちの棚から無造作にカゴに入れていく男に美由紀は近づいた。

「おにいさん、これ借りるの?若い子が好きなの?これ、私、借りたいな。」「え?ああ、いいよ。」「これ、〇〇モノよね。こういうのも好きなの?」「あ・・・ああ。」「ブー。不正解。」美由紀は、犬笛を吹いた。

 2匹の犬が、吠えもせず入って来た。他の客は、驚かなかった。

「サチコ、ジュンコ。このオニイさんが遊んで欲しいって。」

 2匹の犬は、最初、男を舐めていたが、もう1人、そっとやって来た男がいたのを見て、「アタック!!」と美由紀は合図した。2匹は、2人の腕に飛びつき、噛んだ。

「ってて。あんた、店内にペットは・・・。」

「ペットは入店禁止。でも、警察犬はオッケー!!」そう言って、青山はDDバッジを押した。DDバッジとは、所在地を報せるバッジだが、簡易的な合図にも使われる。

 午前9時。江戸川区。GERO新小岩店。

 馬場と金森は、AVコーナーの隅で監視していた。

「来るかな?」「来るわよ。」

 やがて、男が1人、カゴに、無作為に選んだDVDケースを陳列棚から出して、放り込んで行った。

 馬場は近寄って、男のカゴから、そのDVDケースを自分のカゴに移して行った。

「何してる?」「DVDを移してるよ。オニイさんの借りたいやつ、僕が借りたいのとぴったり一致するんだなあ。」

 男は馬場を無視して、また無作為にDVDケースをカゴに入れた。馬場は、すかさず自分のカゴに移した。」

「お雨、喧嘩売ってるのか?」「え?GEROは色んなモノ売ってるけど、喧嘩も売ってるの?」

 遠巻きに見ていた男が。「おい。時間だ。帰るぞ。」と、声をかけたが、男は馬場に襲いかかった。馬場はすかさず一本背負いをかけた。

 仲間の男が逃げようとしたが、金森は巴投げで投げた。

 午前9時。品川区。GERO西五反田店。

 さやかと高木は、店内に急いで入ろうとする、大量の袋を背負った男を見かけた。

「オニイさん、お尻に火が点いてるわよ。」と、さやかが声をかけた。

「何だと?」振り向いた男に、さやかと高木は、フリーズガンを浴びせた。フリーズガンとは、文字通り凍らせる為のもので、液体窒素を用いている。

 袋は、たちまち凍って、男の尻も凍った。

「鎮火完了!」と言った高木に襲いかかろうとしたので、さやかは、男の股間にフリーズガンで撃った。

 午前9時。新宿区。GERO新大久保店。

 窪内真二郎と由紀恵は、入店すると、まっすぐAVコーナーに行った。ちらほらだが、大学生がいるようだ。

「手伝いましょうか?」と、由紀恵は、大量のDVDケースをカゴに入れている男に言った。

「え?」「陳列するの、大変そうだから。私、ここでアルバイトしたことあるの。」

「か、借りるんだよ。邪魔するな。」「あなた、何人?日本語分かりますか?」

「馬鹿にするな!」「馬鹿はあなたでしょう。お父さん、さっき私、ここでアルバイトしたことあるって言わなかった?」「言ったな。」「ざっと数えて500枚。そんなに借りられないわよ。どうやって、自動レンタル機で借りる積りだった?上限は50枚よ。」

「まあまあ。後で選り分ける積りだったんだろ?なあ、そうだよな?」と言って、真二郎は、男の背後から脱臼させた。

 他の客は目を逸らせていたが、その様子を見ていた男がいた。

 真二郎は、懐からテニスボールを出して、杖でフルスイングした。ボールは男の眉間に的中。男は倒れた。

 ―完―

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大文字伝子が行く271 クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ