ある夏の夜が明けると君がいなくなっていた。
@shuya4848
第1話 落とし物は君の手帳
「別に興味ないかな」
その瞬間、騒がしかった教室が一気に冷え込んだ気がした。
そう言った彼女は教室を出てどこかへと走り去ってしまった。彼女の名前は桜川日和さん。いつも陽気でクラスの中でも良く目立つ顔立ちの良いリーダー的な存在だった。
そんな彼女が放った言葉は普段なら絶対に言わないだろう言葉であり、拒絶の言葉であった。教室はしばらく凍りついた後、いつも場を盛り上げる子が喋りはじめた。
「ひよっちどうしちゃったんだろねー笑笑」
ちょっとぎこちない感じなしゃべりだったが教室は徐々に元通りの騒がしさに戻って行った。
その日がきっかけなのだろう。次の日から彼女に近づく人がいなくなっていった。とても薄情だと思うけど、これが現代の希薄な友人関係なのだと思った。まだ高校1年生であり、入学して半年しか立っていないのだから。
ちなみに僕はそんな教室にいるかどうかも分からないようなモブだと自覚している。たぶん名前を覚えていない人も多いのではないだろうか。
授業の終わりを知らせるチャイムと共に、みんな一斉に帰り支度をする。「今日カラオケいこーぜ」「買い物いこー」などの言葉が飛び交う。もちろん僕に話しかけている訳ではないため、目も向けずに教室を出ていく。そして今日も行くのだ。いつものところへ。
初めてそれを見た時は衝撃が走った。
ある夏の夜が明けると君がいなくなっていた。 @shuya4848
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