5 準備
第16話 店
「ハイトさんのミサンガ、とっても素敵だからお店を開いてみたらどうかしら。今回みたいにプレゼントとして欲しがる人もいると思うわ」
エステルからそう提案されたものの、引っ越してきたばかりの土地でいきなりミサンガを売ることには抵抗があった。今まではシルビアの庇護があったので何の心配もなくミサンガを売れたが、この町ではそんなものはない。もう少しオルディーデの生活に慣れてからでもいいような気がした。
その話をリゲル団長が聞き、一つの提案をした。
「そういうことならフィッツさんに相談してみるといい。あの人の後ろ盾があれば何も怖いことはない。どの道生活費はどうにかしなきゃならないんだからな」
当面の生活費はシルビアが用意してくれたし、ハイトをこの町へ呼んだオルディーデ卿からも防衛呪術の見返りとして支援の約束をしてもらっている。しばらくお金の心配はないが、いつまでも人に頼っているわけにもいかない。ゆくゆくは自立のために何か考えないといけないだろう。
ハイトはオルディーデ卿を訪ね、事情を話した。すでにハイトのまじないに触れているオルディーデ卿はハイトの話を聞いて頷いた。
「エステルさんの言う通り、噂が広がればハイト君のミサンガを欲しがる人も出てくるでしょう。あなたは正真のまじない師なのだし、正式な商いとしても問題ないと思います。私もあなたの編んでくださったミサンガを身に付けていますが、あなたのミサンガはとてもあたたかくて安心します。店を出すということでしたらお手伝いします。――ですが、ハイト君は自警団への入団も希望しているのですよね? 防衛呪術も担ってくれているのだし、それだけでもう自立していると私は思います」
オルディーデ卿はそう言って笑った。
「出店の手続きは私がお教えしますから、いつでも声を掛けてください」
オルディーデ卿にここまで言ってもらえれば心強かった。まだ決心がつかないのではっきりとした返事はしなかったが、助力を約束してくれたオルディーデ卿に、ハイトは丁寧に礼を言った。
オルディーデ卿はハイトを好ましい人物として捉えているようだった。
「あなたのような人にこの町に来てもらって本当によかった。色々と大変な思いをさせてしまったかもしれませんが、これからも力を貸していただけると助かります」
オルディーデ卿の言葉に、ハイトは頷いた。
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