4 プレゼント
第14話 依頼
エステルにミサンガを渡した数日後、学校帰りのエステルが一人の少年を連れてハイトの小屋へやってきた。彼はエステルの同級生で、近々遠くの町へ引っ越すのだという。
「それでね、引っ越す前に、もうすぐ誕生日を迎える彼の親友に、プレゼントを渡したいんですって。何をプレゼントしたらいいか相談されたから、ハイトさんのミサンガを薦めたの。ハイトさんのミサンガを持っていると寂しさが癒やされていくような気がするから。もちろん、報酬は払います。お願いできませんか?」
エステルにそう言われ、ハイトは二つ返事で引き受けた。学生の二人から金銭を受け取るのは気が引けたが、二人共どうしても払うと言うので、少しだけ受け取ることにした。
ハイトは二人を二階の自室に連れて行き、作業机の脇の壁に掛けられた刺繍糸の中から好きな糸を選んでもらった。
二人は壁一面を覆い尽くす多種多様の刺繍糸を眺め、息を飲んだ。
「すごいわね。こんなにたくさん糸があるなんて」
エステルの言葉に少年も同意して頷いた。
二人は親友の好みを思い返しながら、薄紫と水色の糸を選んだ。思慮深く優しい性格らしいので、ハイトも追加で薄桃色の糸を選んだ。
「よかったら君の分も編むよ。離れ離れになるのなら、お揃いで持っていた方が記念になるだろうし」
ハイトが提案すると、少年は遠慮して「でも、そんなの悪いし」と言った。
「せっかくだからお願いしたら? あの子もあなたとお揃いのものを持っていたらきっと寂しくないわ」
エステルにそう言われ、少年は頷いた。
「じゃあ、お願いしようかな」
少年は親友のために選んだのと同じ糸で自分のミサンガも編んでほしいと言った。ハイトは承知して頷いた。
「ハイトさん、引き受けてくれてどうもありがとう」
「いいよ。今夜のうちに編んでおくから、また二人で取りにおいで」
「はい」
二人は頷いてハイトの小屋を後にした。
カイングネイトでも町の人達に頼まれてミサンガを編むことはよくあった。シルビアの厳命で報酬ももらっていた。ただ、シルビアの手を離れてから、有償でミサンガを編むのは初めてだった。心做しか緊張した。
静かになった真夜中、ハイトは少年達の友情に思いを馳せながら二本のミサンガを編んだ。
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