第5話 オルディーデ卿
荷解きが落ち着いたある日、ハイトはリゲル団長に連れられてとある屋敷を訪ねた。
「シルビアさんからも仲介を頼まれていたし、これから会いに行く人もお前さんと早く対面したがっていた。いい人だからハイトもすぐに気を許すさ」
リゲル団長にそう言われ、大きな屋敷の一室で対面したのは、ハイトより十歳ほど歳上に見えるすらりとした細身の人だった。大きな瞳と引き締まった口元に微笑みを浮かべ、柔和に二人を出迎えてくれた。リゲル団長は丁寧に頭を下げた。
「フィッツさん、彼がシルビアさんが派遣してくれたハイトです。――ハイト、こちらはフィッツさんだ。みんな彼のことをオルディーデ卿と呼んでる」
ハイトも畏まって頭を下げた。オルディーデ卿は笑って言った。
「よしてください、二人とも。――ハイトさん、私はフィッツです。お会いできて光栄です。シルビアさんにお願いしてあなたをこの町へお呼びしたのは他でもない私です。――リゲルさん、申し訳ないのですが、ハイトさんと二人で話をさせてください」
リゲル団長は頷いて退室した。オルディーデ卿はハイトをソファーに座らせて話を続けた。
「世の中はまだまだ平和なものですが、水面下では物々しい話が飛び交っています。もしものことがあった時、町を守る術はないかとシルビアさんに相談したらあなたを派遣してくださるというので来ていただきました」
彼はそう言うとポケットから一つのブレスレットを出した。ハイトはすぐに勘付いて言った。
「シルビア姉さんの作ったブレスレットですね。まじないが掛かってる」
オルディーデ卿は恥じらうように笑った。
「そうです。私を守ってくれるまじないです。手放せなくて、ずっと持っているんです」
オルディーデ卿はブレスレットを大事そうに腕に付けた。
防衛呪術の方法にも色々あるが、オルディーデに関してはオルディーデ卿を通して土地を守ることになる。ハイトとオルディーデ卿との相性が重要になるが、対面していても居心地の悪さは感じないので問題はなさそうだった。
ハイトは防衛呪術用のミサンガを編み、オルディーデ卿に身に付けてもらうことにした。
「ハイトさん、あなたのことは親しみを込めてハイト君と呼ばせていただきます。私のことは、フィッツと呼んでください」
フィッツにそう言われ、ハイトは笑顔で頷いた。
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