第2章 移住譚
1 師業
第4話 リゲル団長
移住直後、ハイトはシルビアのつてでオルディーデ自警団の団長を務めるリゲルと知り合った。ハイトより二十歳近く歳上の人で、半袖のシャツからよく鍛えられた太い腕があらわになっていた。
リゲル団長はハイトを見ると頷いた。
「いい青年だ。さすがシルビアさんの愛弟子だな。この町も今は平和なもんだがいつ何が起こるか分からない。防衛を担ってくれるのなら助かるよ」
呪術を扱う者は体も強くなければならない。――シルビアのその言葉でハイトも幼い頃から体を鍛え、ほっそりした見た目以上に体力はあったし簡単な護身術は心得ていた。幸いその術を使う機会は今まで一度もなかったが、まじない師として使命を持って移住した以上、いつか何らかの災禍に巻き込まれる可能性もある。体は強ければ強いほどいざという時に役に立つ。
「あの、団長さん。自警団というのは僕のような
移住者でも入団できるんでしょうか」
そう訊ねると、リゲル団長は自警団の活動内容を教えてくれた。普段は災害に備えた訓練や備品の整理、防犯の見回りなどを行い、その合間に体を鍛える訓練も行うらしかった。
「ただな、自警団は移住から三ヶ月経たないと入団できない決まりになってるんだ。入団審査もわりと厳しくて身元調査はそれなりにする。テロリストや犯罪者が紛れ込んでは困るからな。今すぐにでも入れてやりたいが、三ヶ月は我慢してもらうことになる」
「それまでの間、僕にできることはないんでしょうか」
「まずはこの町の暮らしに慣れてもらわなきゃな。俺が後見人になって面倒を見るからその辺のことは心配しなくていい。そんなことより、住まいはあの小屋でいいのか? 一応、住めるように綺麗にはしておいたが」
「はい。あの小屋でお願いします。シルビア姉さんは僕のことをよく分かっているから静かな所を選んでくれたんだと思います」
シルビアがハイトの住まいに選んだ小屋は、町外れの森を少し奥へ進んだ所にあった。長年空き家になっていて修繕が必要だったが、有志が集い、住むのに困らない綺麗な小屋へと生まれ変わらせてくれた。
「正式な団員にはしてやれないが、見学なら歓迎するぞ。みんなにも紹介するから折々顔を出せ。お前さんの人柄ならみんな受け入れてくれるだろうし、知り合いがいた方がこっちでの暮らしも楽になるだろ」
リゲル団長はハイトの生活基盤が整うまで毎日小屋に通い、色々と手助けをしてくれた。
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