第27話 あの日の後の出来事

「全く、本当に人遣いの荒い妹だ。ごめんな。聖女さま。」


「いえ、こちらこそ皇女さまを傷つけてしまいすみません。」


結局第3皇子に神殿まで来てもらった。ラリーにとってはさっきぶりの再会。


第3皇子はそのまま第2皇女を馬車に乗せて皇宮に帰って行った。


「……そういえば聖女さま。僕がいない間、どのように過ごしていたのですか?」


廊下を歩いていると突然ラリーに質問された。しかもよりによってこの質問。


「……聞きたい?」


「はい。」


「……ずっと神殿に居た。」


ラリーを送った後、神殿に戻ろうとしている時、


バコォン。


爆弾が爆発する音がした。それも一般人なら到底手にできないような大きさで、質がいい爆弾だった。


ヒヒィィンと、馬が驚いて前脚を持ち上げる。御者が馬車の中にまで影響を受けないように必死に馬を制御しているのが窓から見えた。


しばらくして爆弾の音は消えた。全ての爆弾を使い切ったのだと思い、馬車を出てけが人を治療して回った。


「あ、あなたのお名前をお聞かせください!」


治療しておらず、怪我もしていない人からもそう言われた。わたしは人の熱の暑さで焼け死んでしまいそうだった。


今がチャンスなのではっと心の中で悟った。


「……聖女、エミ・クロックです。神殿も近いので、少し休まれて行きませんか?お好きな飲み物と果物などをお出しします。」


すると、人々の表情は一瞬にして変わった。感謝の顔だったけれど、軽蔑の顔となった。


「なんだ、神獣かよ。下等生物なんだから、俺たち人間様を治して当たり前だよな。」


「バカバカしいわ。感謝して損したわ。」


「時間が獣に奪われた。最悪なんだけど。」


人はみるみる居なくなった。感謝を撤回し、神獣を罵倒する。感覚が麻痺していたのかもしれない。


神殿の神官や雑用係、ララとリリとラリーと第3皇子が異常なだけで、一般人と第2皇女たちが通常の反応だった。


なれっこだと思っていたけれど、「俺たち人間様を治して当たり前だよな。」この発言だけはなんだか悲しかった。


その後は無事に神殿に帰れたのだけれど、やっぱりあの発言が気がかりだった。


そして、同時に不安にもなった。まだまだ人間の神獣に対する認識が変わっていないことがわかった。


世界平和は本当に実現できるのか、出来ずに生涯に幕を閉じるのか。不安でしかない。


「疲れた。もう寝ようかな。」


その日はいつもよりも早く眠ることにした。


ベッドにダイブすると、すぐに気絶したように眠ってしまった。


いつもより眠りが深かった。

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