第26話 皇女はキラキラしたものが好き
「その里に行くのはいつ頃になるのですか?」
「それはまだ未定。ただお兄様に少しは故郷に顔を見せろって言われたから行くしかないんだよね。」
ふむっ……と腕を組んで悩んで居ると、後ろから恐ろしい気配がした。嗅いだことのあるような金木犀の匂いが鼻の中に吸い込まれる。
懐かしくもあり、感じたくないいやぁ〜な気配だった。
「里って、レオナの就任式をサボってまで行く必要があるの?」
甘くて高い声。髪が引っ張られたように痛い。あまり思い出したくないと、本能が拒絶する。
なんでこの子がここにいるの……。
「皇女さま、ここは聖女の執務室です。せめてノックをして入ってください。」
「聖女のしつむしつってなに?」
「わたしがお仕事する場所!皇女さまのお父様も執務室でお仕事しているの。」
今や名前も知れ渡って居ないような影の薄い皇帝だから仕事してるかどうかは分からないけど。
まだレオナ・エルフェルトも10歳ってこと……それなのに皇宮一帯を牛耳ることが出来るって才能の無駄遣いね。どこぞの独裁者みたい。
そういえば、第2皇女が成人した時はわたし26歳かな。その時の世界情勢はどうなんだろ。気になる。
「私ね、キラキラしたものがだーいすきなの!罰を与えない代わりに、神殿が破産するくらいのやつ、よろしくね?」
つまり、聖女を罰しない代わりに皇太子就任式で神殿が破産するくらい高価な宝石やアクセサリーを貰って、自分の大嫌いな他人の勢力を潰したいってこと。
そんなに神殿は貧乏じゃないんだけど。財産はそこらの公爵家と同じか少し上だと思ってるけど。
「……」
皇太子就任式にはあまり出たくない。貴族がたんまり居るだろうから。
貴族は外見よりも血筋を重視する。わたしは神獣の里では良い血筋だけれど、人間界では下賎に値する。神獣なのだから尚更。
「ちょっと、なんで返事しないの?私がまだ皇女だからって舐めてるわけ?あと数年したら私が皇帝になるんだからね!そしたらあんたなんてぺしゃ––––」
ペシッ!
「すみません。うるさかったもので。」
「……あはは、どうしよう。」
ラリーが第2皇女の首を軽くチョップして気絶させた。今の状況を考えてくれたのは良いんだけど後のことも考えてほしかった。
身の毛がよだつ。第2皇女も言っている通り、数年したら第2皇女は皇帝となり、国を思うがままにできる。
一番国を任せたくない人ナンバーワンだよ。こういう人が近くの国にも居たような。気の所為かな。
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