第25話 兄からの手紙
「さっきは興奮し過ぎただけだから気にしないでねぇ〜!」
執務室に着くや否やエミはラリーに焦りながら言った。
「マジ長すぎて校長先生かよっ!って思たわ!」
「話が長い人は相手を疲れさせてしまうので程々にしてくださいね。」
とても双子とは思えない口調の違いだった。
落ち着きを取り戻したエミは小さく咳払いをして、目をキョロキョロと左右に動かしながら言った。頬を赤らめて、スゥーッと息を吐いて深呼吸した。
「ラリー、護衛騎士の修行お疲れ様!ラリーが望んだ道では無いかもしれないけれど、いつかは自分が望む道に歩ませてあげる。」
ララとリリが興奮気味にこちらを見つめているのが分かる。ちらりと視線の方を横目で見る。
双子の満面の笑みが眩しかった。期待を抱いて、母親が子どもを見つめるような優しい目、三日月のように曲がった口角。逆にプレッシャーとなる。
「改めて聞くね。わたしの護衛騎士になってくれる?」
「……もちろんです。」
数秒の間が空いた。一瞬悩んだのかもしれない。
でも断ったとしたら2年間の努力が水の泡になるし、また雑用係に戻るし、わたしはラリーにとっては一応上司だから、断ることができずに了承したのだと思う。
最初からラリーに拒否権は無かったってことか。社会の闇って感じする。
「じゃあさ!今度神獣の里に帰るからその時の護衛、任せるね!」
神獣の里に帰ることになった経緯は話すと長くなるけれど簡潔に話しておく。
数日前に兄のエレンから手紙が届いた。
『少しは故郷に顔を出せ。エレン・クロック』
というおそらく問い詰めようとしていたのにエミが全く帰ってこなかったことから、我慢の限界に達して手紙を出したのだろう。(第4話参照)
しかし2年の時が経った今、人間界では色々なことが変化しようとしている。
かなり前に第1皇女が訳もなく皇帝から西館に謹慎命令が出され、第3皇子は魔塔の魔法使いへと身分を変えようとしている。
皇帝は合理的な人(多分)だから訳もなく謹慎をさせたりはしないはず。つまり、皇室は実質的に第2皇女に支配されている。
そして1ヶ月後に皇太子就任式が開催される。就任式は貴族ならば皆参加しなければならないし、平民の神官も居る神殿は、聖女を含め雑用係と騎士以外の全員が参加しなければならないという、面倒な習わしがあった。
神獣の里は人間界とイギリスからトルコほどの距離があるため、今から里に言っても帰ってくるのは半年後ほどになる。
困ったものだ。
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