第22話 数ヶ月の実力

「いいのですか!?」


「そうだと言っているだろう。」


ぶっきらぼうに言った。第3皇子の言葉が中々頭に入らないし、信じられない。


借りを作ったことになるけれど返せばいいやと思った。……どうやって?


「では、1週間後に一緒に皇宮に行ってもいいですか?」


「ああ、もちろん。」


第3皇子はなぜか微笑んだ。


「ということだから頑張ってね!!」


1週間後、わたしはラリーと共に皇宮にやってきた。


ラリーは動きやすい青いジャージ姿だった。かわいい。


ラリーから見るとそこは王国よりも美しく、壮大な場所だった。驚きのあまり周りを至る所まで見渡した。


「ここは神殿よりも豪華だから」


わたしはラリーに向かって微笑んだ。


すると、運動着姿の第3皇子が皇宮の入口から向かってきた。


「やっほー。その子がラリー・ネッド君だね?聖女さまはどこかで休んでいて、帰ってもいいよ。ラリー君は僕が送るから。」


「では、仕事を秘書に全て任せる訳には行かないので、失礼致します。」


そういって馬車に乗り込み、神殿に戻った。


第3皇子とラリーは、皇宮の練武場に向かった。


「さてと、聖女さまも帰ったことだし、僕たちは練習しようか。まずは基本からね。君、なにも知らなそうだし。」


正論


騎士道、基本、剣術、戦略、歴史、全てをラリーの頭の中に徹底的に叩き込んだ。


「騎士道というのは騎士の精神的支柱をなした気風、道徳、忠誠、武勇に加えて、神への奉仕、廉恥、名誉、婦人への奉仕などを重んじるもの。」


「なるほ……ど?」


数多の騎士に関する説明に吐き気とめまいがする気がする。


分かっているようで分からない。


何日も何日も皇宮に来ては練習を続けた。初めは筋トレや勉強ばかりだったけれど、徐々に剣モドキを触ることが出来るようになってきた。


最初は木刀ですら重くて持ち上げられなかったけれど数ヶ月が経つと真剣を持ち上げられるようになった。


カキンッ!カキンッ!


ラリーは第3皇子と手合わせできるほどに成長していた。


「いいね、ラリー君。この調子で行くと、あと数年後には正式な護衛騎士になれると思うよ。」


「はい。」


周りで皇室の騎士たちが見ていたけれど、数ヶ月での実力にドン引きしていた。


しばらくして皇室にはラリー・ネッドは化け物の化身だという根も葉もないうわさが広がった。


それから数年後……

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