第21話 捧げ物は神に

「世界平和……?」


分かりきった反応。レールのように決まった道を通っている。


「世界平和というのは世界を平和にするという意味です。神獣と人間はずっと争っていたのですからそれを鎮めるためにわたしが聖女として立ち上がったのです!長らく人間と行動を共にしてきたわたしが!」


「そ……そうか。」


前にも長文早口を第3皇子に言った気がする。


感情でゴリ押しはダメだから、他に作戦あるかな。結局はゴリ押しにならない?


「殿下は第2皇女が居る限り命が脅かされますよね?」


「ああ……まあ……」


「ですので!殿下が皇太子になるまで、文句無しに誰でも無料で治療を施しましょう。」


第3皇子の身近にいる側近が怪我をしても、主治医ではなく神殿に行けば楽々と治療が施されて復活する。


本来神殿は料金が高いから、かなりお得な条件だと思う。


「君は皇室の財産を舐めているのか?」


「……へっ?」


あれ、わたしの無料治療施し大作戦が効いてない?


普通の人なら世界を壊すんじゃないかの勢いで大喜びするはずの条件なのに。第3皇子が普通じゃないから?


「皇室は君が思っている以上に金に困ってはいない。むしろ余っているほどだ。それに、僕たちだけが無料だなんて少し不公平な気がするのだが。」


「殿下がお願いさえすれば全員無料で治療が受けられるのですけど。これで公平でしょう?」


皇宮の使用人がこっそりと真横を通り過ぎる。あの第3皇子とわたしが居るから皆避けて通っていたのに。


もしかして、わたしの噂が良くなっていたり?


期待を寄せる。そう思うとニヤニヤがいつまで経っても止まらない。


「神殿に不利な内容だと思うのだが。」


「神殿の支持が上がるだろうから大丈夫です。」


第3皇子はムッとした表情で言った。


「僕が皇太子となれずにレオナが皇太子となったらどうするのだ。」


「誰かが皇太子になったという事実は変わりませんので。殿下というよりも、誰かがの方が正しいです。語彙力がないのですが大丈夫ですか?」


「まあ」


適当な返事をした。第3皇子か第1皇女か第2皇女が皇太子になったら無料治療は解除されて有料となる。


神殿は捧げ物を収入源にしているようなものだったから永遠無料でも良かったんだけど。


いつかは無料にする予定だからいいか。


今思えば捧げ物は神殿に献上したものではなくて神に献上したものなんだけど。これが神殿のものとなっているから気に入らない。


「じゃあ、引き受けて頂けますか?」


自分の白い髪をくしゃくしゃに掴んで答えた。


「……分かった。」





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