第17話 ラリーの過去の話

「……どういうこと?」


「つまらないとは思いますが、僕の昔話を致します。」


一度深く呼吸をした。


ラリーは昔、誰もが支持するだった。


何不自由なく、好きな物だけを食べ、好きなことをして時間を潰し、帝王学等の次期国王としての学問を学び、貴族との関係を築いた。


しかし、その生活は直ぐに終わった。5歳になって間もない頃、母が流行病で亡くなった。


亡くなる間際にみた母の姿は、手が黒く染まり、顔が腫れているまるで化け物のような姿だった。


すぐに父は新しい妻を迎え入れ、それからほどなくして僕の弟となる『ルエ』が産まれた。


一年もしなかったと思う。おそらく、迎え入れる前から妊娠していた。


そして3年の月日が経ち、父の様子が急変した。継母の操り人形のようになり、継母が居ない時は必ずベッドの上で座っていた。


そしてなにより、血筋ではなく実力で決めなければならない重要で偉い役職は継母の親族が独占するようになった。


そして祖国、ネッド王国は継母に乗っ取られた。


自分の息子を後継者にしたかった継母にとって1番邪魔な存在が嫡子の僕だった。


だから継母は、僕と親しくする人々を次々と解雇したり、難癖を付けては濡れ衣で投獄し、自分の都合のいいように動く使用人を付けた。


王宮での僕の立場は徐々に失っていき、最終的には馬小屋で生活するようになった。


成長した弟は、度々馬小屋に来た。その時に毎回、


「兄上、ここ、臭くないですか?王宮は良いですよ。快適ですし、僕の言うことをなんでも聞いてくれる使用人も沢山いて。あぁ、兄上も母上の子供だったら良かったのに。プハハ……」


親も親なら子も子だ。昔に曖昧だけれど同じようなことを継母に言われた気がする。


マトモな食事も与えられないため、馬小屋で働くしか無かった。


そこで大人達は僕の立場を嘲笑って、僕がこなした仕事の手柄を全て横取りした。


いくら頑張っていても、僕の給料は変わらない。むしろ、減っていた。なぜだかは検討がつく。


馬小屋の大人達が横領したか、継母か弟が横領して自分達の贅沢に使ったか。使用人が自分の貯金にしているか。


信用できる大人が誰一人として居なかった。信用したくもなかった。


裏切られるのが分かっているから。人間は弱い立場にある人間を下に見る。*スタンフォード監獄実験でもそれが証明されているようなもの。


スタンフォード監獄実験


スタンフォード大学で心理学者フィリップ・ジンバルドーが行なった実験。


ジンバルドーは「人間の行動はその人の気質や性格で決まるのではなく、置かれた状況によって決まる」ということを証明しようとした。

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