第16話 わたしは欲深い
「剣を習わない?わたしの護衛騎士になってほしいの!」
ラリーを執務室に呼んで開口1番、そう言った。
頭がハテナで埋め尽くされた。
「どういうことでしょうか?」
「そのまんまの意味!辞めたいんでしょ?雑用係。わたし護衛騎士がいないしちょうどいいや!って思ってね。」
聖女に護衛騎士が居ないというのは人間界では大問題。
過去には暗殺された聖女もいるし、神獣であるわたしが聖女なのだから過激派がそろそろ動き出す、と思う。
「剣を教えてくれる方は……?」
「あまり関わりたくは無いけれど、第3皇子にお願いするつもり!アイツ、かなり剣の腕があると思うの。」
断ると言われたら治した借りを返してほしいって言えばいいし……ってご褒美を貰ったし助けて貰ったから無理か。
まあお願いすればなんとかなるでしょ!神獣を侮るんじゃないよ!アイザック・エルフェルト、第3皇子!
無計画だった。なにもかもが。
「僕の為に関わりたくない人と無理に関わる必要はありません。」
「どうして?」
「僕は今の暮らしで十分ですので。これ以上贅沢はしたくありません。」
十分って、この前辞めたいって言ってたじゃん。嘘つき。
エミは立ち上がってラリーの鼻をつまんだ。
「わたしはこう見えて欲が深いんだぁ。だからこういう時、欲が出ちゃうの。独占欲がね。」
こういう恋愛小説の立場は普通逆なんだけどな。髪、触られてみたいな。
ハッとなってラリーの鼻を離し、自分の頬を手で叩いた。
両頬は赤くなって、照れているように見える。
「わたしは神殿の人の生活しか改善出来ないからさ。」
わたしが目指すは世界平和!だけどまずは神殿だよね。行動、いつ起こせるんだろうな。
このまま10年くらい経っちゃうんじゃないの!?……そこまでではないか。
ていうかそもそもなんでこんなに神殿は腐敗してるの?聖女さまはしっかりとこなしていたはずなのに。
そんなの気にしなくてもいいかぁ!難しいもの!
「難しいことは考えずに気楽に行きましょうや。1番ダメなのは過去に囚われている事だよ!没落貴族の息子でも、これから楽しく過ごせばいいよ。」
没落貴族って贅沢1つできないほど追い込まれているのだなと実感した。
「……?誰と勘違いしているのでしょうか。僕の家門は没落しては居ませんが。」
とある人に支配されてはいるけれど。
時が止まった。今ならどんないたずらでもできる。だけど体が動かない。
もしかしたらわたしは意識があって時の止まった空間が見えているだけなのかもしれない。
「継承権争いに負けたんです。僕には後ろ盾が居なかったけれど、弟には実質的に国を支配する母親が後ろ盾にいたので。」
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