第11話 メンタルが強い
「わたあめ1つ……ください。」
「はい。250円。」
チョコバナナのほうがボリュームがありそうだったのに、わたあめの方が高かった。
小銭を手渡し、屋台の店主が砂糖を入れて割り箸を機械の中でクルクルと回した。
少し経つと白い雲のようなわたあめが布のような形をして割り箸にくっつき、みるみるうちに真ん丸のわたあめが完成した。
「まいどあり。」
さっきチョコバナナを食べたところに戻り、ひっそりとわたあめを頬張った。甘い。
ひっそりとわたあめを頬張るわたしの姿はまるで空気のようで、誰にも見えず、誰にも気にされない。
どこにでも、誰にでも、常に空気が付着しているように、見ているように、わたしへの視線を感じる。
気にされていないのに視線が集まる。へんな気分だった。
「あらぁ。お兄様が聖女さまの為にお祭りを開いたと言うから来たのに、なんですの?この暗いお通夜みたいなところは。」
割り箸にくっついたわたあめを無造作に舐めながら声のするほうを向いた。
真っ白な髪を三つ編みにして前に垂らし、緑色の瞳で辺りを見回している7歳か8歳の女の子がいた。
その女の子の使用人らしき人が怯えながら女の子の背中を押し、女の子の細い腕を掴んでいる。
女の子に対する使用人の態度が少し気になったけれど、あまり気にしないようにした。女の子の言動も。
「あらぁ?1番お通夜みたいな格好してるお姉さん。そのローブ、邪魔じゃない?このレオナが直々に取ってあげる!感謝しなさいよ!」
そう言って後ろからローブのフードを引っ張ってきた。
フードと一緒に、髪も引っ張って来たから頭の外側が痛い。使用人はオドオドしながらも、ただ見つめるばかりで何もしてこなかった。
使用人なら主人の暴走を止めてよね。神獣と人間じゃ常識が違うから困る。
てか……この子メンタル強いにも程があるでしょ。幼い子って皆こんくらい?
いや、今はそれどころじゃない。もしフードを外して神獣だってバレたら……
「こんにゃろ!生意気な獣め!」
そんな罵詈雑言を吐かれて石を投げられて屋台が押し倒されて……私の全身には石が積もって……窒息……
ついつい物騒なことを考えてしまう。人間が神獣を誤解しているように、わたしも人間を誤解しているのだと、心に言い聞かせる。
そういえば今は人間の姿なのだから限界が来ない限りは神獣だってバレないんじゃ?
で、この前元の姿に戻って休憩したから……神獣ってバレなくてセーフなんじゃ、
なんだ、無駄な抵抗は辞めて、初めから大人しくフード脱いでおけば良かった。
自らフードを下ろした。フードに収まっていた髪が一気に押し出されて外の空気に当たり、ひんやりする。
「れ、レオナちゃん、人の外見をいじっちゃダメでしょ!ただローブを着ているだけなのに!」
「……れ、レオナちゃん……って、今、言った?」
女の子が閉じかけた手で私に指を指した。怒りのような驚きのような感情が体の中で喧嘩しているのだと思う。
決まった、とでも言うように格好付けながら使用人の方を見た。さっきよりも震えていて、具合が悪そうに見える。
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菜乃みうです
第11話ご覧頂きありがとうございます。
お祭り久しぶりに行きたいなと思いつつ一緒に行く人が居ないから結局行かないのが私です。1人でお祭りに行く勇気とかがないので。
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