第10話 チョコバナナ

「やっと終わった……」


休憩を挟みながら書類を全て終わらせた。外は暗かったけれど、街の灯りでほんのりと明るかった。


満月がさらに街を照らす。今の時代は満月がそんなにも明るく照らすという認識はないけれど、なぜだか今日は一段と月が輝いて見える。


ひゅうぅ……どぉーん


花火のような音が外から聞こえた。驚いてベランダに向かい、空を眺めていると、いきなり満開の花のように花火が上空に咲き乱れた。


「聖女さま、神官さまからこちらを。」


リリに赤い封蝋で留められた洋封筒を渡された。封蝋には鳥の紋章が押されていた。


〝親愛なる聖女さまへ

いかがでしょう?僕からのご褒美は。僕の権力を最大限使い、沢山の屋台を開き、人々が楽しく舞い、美しい花火を散らす。遅くなりましたが、今夜は楽しんでくださいね。

⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀アイザック・エルフェルト〟


手紙にはそう書かれていた。喜びで呼吸が荒くなって感情が高ぶり、テンションが上がる。


早速淡い紫色のワンピースに着替え、黒くて深いフードの着いたローブを羽織り、お金を持って神殿をこっそりと抜け出した。


ただでさえ灯りでよく見えるのに、興奮で更に明るくなり、眩しくて逆によく見えない。


この人に一生ついていきたい。


「えっと、ちょこばなな……1本ください。」


「はい、160円だよ。」


神獣だとバレるのではないかとヒヤヒヤして上手く話せない。


160円を渡して青いチョコのかかったちょこばななを屋台の店主から受け取り、その場を後にした。


目立たないところでひっそりとちょこばななを堪能する。


「おいしっ。」


皆に見られているような気がして感想を言いにくい。


スッ…


串に刺さったちょこばななが落ちて手にくっつく。バナナのヌメヌメと溶けかけたチョコが手を襲って汚れる。


チョコバナナを完食し、近くに置いてあったゴミ箱にチョコとバナナのヌメヌメが付いた割り箸を捨てる。


見たくもないのにゴミ箱の中がちらりと目に写った。やきそばや、焼きとうもろこしの残骸が入っている。分別大変だろうなと思う。


「さあて、わたあめどこだろ。」


ゴミ箱の中身を見てしまったショックを可愛らしい食べ物を想像して補い、わたあめを探す。


その辺をキョロキョロとしていると、とんでもないわたあめの屋台の多さに気が付いた。


1、2、3……5軒くらいはある。やきそばやチョコバナナの屋台も同様に5軒か7軒くらいはある。人気そうな屋台はやっぱり多い。


「どこが1番安いんだろ。」


1軒1軒の値段を丁寧に見回す。全て見てみた結果、皆同じだった。


どれでもいいや、と、1番近くにあり、1番人が並んでいないわたあめの屋台に並んだ。


✄––––––––––––––✄

菜乃みうです


第10話ご覧頂きありがとうございます。


手紙でアイザック・エルフェルトの前に空白があると思うのですけれど、普通の空白では隙間が消えますが、blank cherecterと検索し、そこの空白を使うと、


ああ(普通の空白入り)

⠀ああ(blank cherecterの空白入り)


空白が作れます。因みにこれはホーム画面のフォルダの文字を消すこともできます。


『⠀』(blank cherecterの空白です。コピー出来るので良ければ使ってください。)


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