第4話 神獣の里

「父上、エミのことはどうするのですか?昔に「争いなんてやだぁ〜!」と言って抜け出したと思ったら聖女になったんですよ!?」


「村長に聞いてみないとな。エミのことは村長も知っているだろうし。」


神獣の里、エミの家族の家。エミには1人の兄が居た。


そもそもなぜ争いが嫌なのに人間の街に行ったのか。殺される危険性もあっただろうに。


神獣の里の噂話は、エミについての持ちきりだった。数多の神獣が、村長とクロック家に押し掛けた。その度に両家は対応に追われた。


(面倒な真似をしてくれたな。エミ。お前が平和主義なのは分かるが、度が過ぎる。帰ってきたら色々問い詰めてみよう。帰ってくるかは分からないが。)


兄のエレン・クロックは、妹のエミが帰ってこないのではないかと不安で仕方がなかった。エレンは顔や言葉には出さないがエミのことが気に入っていた。(シスコンという訳では無い)


エレンは透明で日差しが差し込んでいる窓から空を見上げた。太陽が眩しいほどに赤く輝いていて、青空を真っ白な雲が所々隠している。


「村長がエミを処刑するとかとんでもないこと言ったらどうするのですか?」


「どうするって。村長に従うしかないだろう。エミは里を抜け出して人間共と仲良くなったのだから、自業自得だ。」


父、エルトン・クロックは冷たい口調で言った。感情が感じ取れない、ロボットのように見える。


父上は、自分の娘だからって忖度はしない。至って平等。


すると、3回ノックをして、誰かが礼儀正しく呼び鈴を鳴らした。


「はぁーい。」


急いでドアを開けた。すると、深く帽子を被っていたけれど、隙間から白髪まじりの黒髪が見え、長い髭を生やした村長が立っていた。


村長が直接やってくることは滅多にない。だから最初は偽物かと思ったけれど、すぐに村長は帽子を外した。黒い瞳、間違いなく村長だった。


「そ、村長殿!?」


思わずみっともない声で叫んだ。


すると後ろから、ドタドタとうるさい足音で父上が近付いてきた。


「これはこれは!村長殿!お呼びになればコチラから向かいますぞ。」


「ふぉふぉふぉ。日頃運動しておらぬから久しぶりに動きたくなってのぉ。エルトン君のご令嬢について、少し話したいしな。」


父上は村長を丁重にもてなした。さっきと全く態度が違った。


それにしてもエミのことを。どうせ判決だろう。分かりきってる。エミは無理やり神獣の里に連れてこられて、反逆罪で処刑される。


残念だったな。エミ。お前の人生は残り少ない。聖女にさえならなければよかったのに。


ティーカップに紅茶を注いでテーブルにはキレイに白いテーブルクロスをかけて、村長の座っている前に紅茶入りのティーカップを置いた。


父上が席につき、一緒に僕も席に着く。


「その、エルトン君のご令嬢のことだがな。」


紅茶を飲みながら村長が言った。ついに判決が下されるのだと覚悟する。ギュッと瞼に力を入れて閉じた。


「あんなに面白い子は中々おらんぞ!」


「「え……?」」


父上と同時に声を漏らした。村長はニコニコと満面の笑みを浮かべていた。


紅茶を飲み干して紅茶を侍女に注がせる。雷が鳴ったかのように、心に衝撃が走った。


「いやぁ。神獣の里を抜け出した子達は時々居たのだが、エルトン君のご令嬢のようにこれほど人間界で出世した神獣はエミ嬢が初めてなのじゃ。」


「ですが、人間界に居ると妹に悪影響を及ぼすと思うのですが。処分か連れ戻した方が……」


「ご令息は随分と冷酷なのじゃな。儂は君たちのように寿命までが遠いわけではない。村長として、神獣を見守りたいのと、面白そうなものを沢山見てから天寿をまっとうしたいのじゃ。」


この気分屋め。村長の話を聞いて、ホッとしつつもそう思った。


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菜乃みうです


第4話ご覧頂きありがとうございます。


意外にも1話、2話を見てくださっている方がかなり多くて驚いています。ありがとうございます。


エルトン、エレン、エミ。頭文字が全員『エ』ですね。『エ』が3つ、エミとなります。エレンの名前を付ける時に思い付きました。


そういえば明日でゴールデンウィーク終わりますね。特に何も無いんですけど。


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