第3話 初、聖女のお仕事

あんな風に世界平和だーとかほざいていた自分をぶん殴りたい。聖女になって一日でそう思った。


神殿内で起こった問題、神殿の課題、客人の相手と治療。塵も積もれば山となる。少し休めば地獄なる。


「はぁぁぁ〜。わたしこういうの苦手なんだけどなぁ。世界平和って言ったって、外に出る余裕すらないんですけど。」


部屋中に響き渡るほど大きなため息を吐いた。幸い、あらゆる国の王さま方は、わたしへの媚び売り?なのかたくさんのプレゼントを持ってきた。


例えば、宝石、一年に一度しか咲かないくらい貴重な花、薬草、


その中には珍しくて少し可哀想だと思うようなプレゼントもあった。


白のアウターを肩落としして人間らしさをアピールする。神獣であることには変わりはないけれど。


「きょーうのごーじょうのはーしのうえー」


「聖女さま!!!!」


呑気に書類を目の前にして適当に歌っていると、1人の中級神官さまがドアを思いっきり開けて入ってきた。


ふつうノックをしない?え、わたし一応聖女だよね?頭の中をぐるぐると回転させた。そして、1つの結論が出た。


たかが神獣って思ってるなこの神官さま。


別にノックをしてほしい訳では無いけれど、少し言ってみようかな。冗談。


「神殿の神官さまは皆こう無礼なの?」


「はい?」


「わたしはまだ手続きはしていなくても一応は聖女のはずなのに。ノック1つしないなんて」


瞼を鋭く閉じて蔑みの目をわたしに向けた。到底目上の人に無礼を働いた人の目つきではない。


人間の中で神獣は嫌われているんだなぁっと、改めて実感した。わたしが過去になにをしたって言うの。わたし前までほとんど目立たずに居たよ。聖女さまのお部屋で読書をしたり、聖女さまのお部屋で聖女さまのお仕事を覗き見したり、街に出たり。


あれ意外と目立ったことしてた……?まあいいや。聖女さまの跡を継いだわたしが今は聖女なのだから!


「聖女さま、申し訳ございません。一刻を争う事態でしたもので、つい。」


「一刻を争う事態?なにそれ。わたしの助けが必要なの?」


「はい。」


椅子から立ち上がって、神官さまの案内に従って神殿で、お客の治療を行う治癒室に入った。すると、剣で斬られたのか傷だらけの豪華な服を着た身分の高そうな男性が担架に横たわっていた。


顔は息苦しさを感じているように見え、今にも死んでしまいそうな青白い顔色だった。


なにをしたらこんなことになるのか、わたしにはよく分からなかった。神獣はこんなにも剣で傷だらけにできるほどの実力はない。神獣は能力に頼りきりだから。


魔物はこの時期に暴れることはない。もう少し肌寒くなったら、体を温めに町に襲いかかる。


とりあえず治すのが先。考えるのは後にしないと。本当に一刻を争う事態なのだから。


上半身の服を剥ぎ、胸とお腹が見えるようにした。腹筋はキレイに割れていて、胸筋も良い。剣で怪我をする前に相手が怪我をしてしまいそうに見えた。


胸とお腹に触れない程度に近付けて、治癒の能力を男性の全身に注ぎ込んだ。


傷口はみるみるうちに塞がれていき、青くなった打撲は、元の肌の色に戻った。


浅い瀕呼吸は徐々に深く、ゆっくりとなっていった。


「治療を完了致しました。そのまま寝かしておけば、数時間後には目覚めるでしょう。」


そう言ってその場を後にしようとした。しかし、身分の高そうな男性の部下らしき人が、わたしを止めた。


さっと振り向くと、初対面であるにもかかわらず、にっこりとした笑顔を浮かべていた。


「あの、ありがとうございます。もし、よろしければ、お名前をお伺いしても?主がお目覚めになられたら、お礼を言いに行きたいのです。」


「……名乗るほどの名は持ち合わせておりません。お礼は結構です。わたしの正体を知ったら、その人を不快にさせるだけだと思います。」


「あっ……でも……!!」


お礼を言われたくない訳では無い。相手を不快にさせたくないだけ。わたしが神獣だったなんて知ったら、この人はどんな反応をするのだろうか。


そんなのは簡単に予想ができる。だからこの人たちは知らない方が幸せになれるに違いない。わたしは陰でこっそりと聖女生活を送っていればいいのだから。


✄––––––––––––––✄

菜乃みうです。


第3話ご覧頂きありがとうございます。


わたしはすぐに自然とスウィングカール?になるのでストレートが憧れです。動画とか見てると結び易くていいなぁ。とか邪魔だから結んでるだけの奴が考えています。


服の名前なんてなんにも分からないから1から調べて書いています。間違っている名前もあるかもしれないので、心の中で笑ってやってください。


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