第10話 鳥型ロボットの記憶する未来
サラたちと自分たちが和解してからしばらしくたある日のこと――。
ヤエトナは午前中サラやアミルと共にロボットの救出作業を終えた後、西方の住居区にある本部へと戻って来ていた。
瓦礫の山から時間をかけて集めたパーツを組み合わせて、鳥型のロボットを完成へと近づけていく。
「出来た…」
最後にずっと大切に保管していた頭部をくみ上げて完成した鳥型のロボットは、ゆっくりと滑らかに動き出した。
「君のコアが壊れていなくてよかったよ。…すまないね、俺の作った粉砕装置で君を酷い目に遭わせてしまった」
再び造り直すかどうか、ずっと悩んでいた。直すことで粉砕装置の迫り来る恐ろしい記憶データも復旧してしまうからだ。懸念はあったけれど、怖い思いをしたあまというのはもっと辛いことのように感じて直すことを決めた。
羽ばたいて肩に乗ってくる鳥型ロボットを見て、苦戦した羽の動きに異常がないことを確認する。
ヤエトナは作業台すぐ横の窓を開けた。
「君は君の記憶したいことを記憶するといい。もう記憶するのが嫌ならただ空を飛んで明日には忘れたっていい。君のしたいようにすればいいよ」
記憶媒体型ロボットであるその鳥はヤエトナの手から飛び立ち、そのまま暗い空へと羽ばたいていった。
ヤエトナから心をもらったあの鳥型ロボットは、きっとヤエトナたちのこれからを記憶することだろう。
何を新たに生み出し、生み出さない決断をするのか。
何を一番に守りたいのか、それによって何を優先して生きていくのかを。
記憶を失くした青年 青時雨 @greentea1
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