第5話 ディテールとまとめ

 流石にここまで読んでいただけた方も食傷気味だろうから、そろそろまとめに入りたいと思う。しかしその前にもう少しだけ詳細も詰めておきたい。


 構造や断熱、設備系の話が見えて来て、全体のゾーニングもイメージ出来たが、もっと細かい建物の内容についても考察しないといけない。建築で言うディテールとは主に詳細な納まりの事であるが、そこまでは行かなくても各空間に持たせる機能を考えてみよう。


 まずフリーレンが必要とする機能であるが、彼女の趣味趣向からすれば大量の魔導書を納める書庫なり本棚が必要になるだろう。そうしてこの魔導書は弟子であるフェルンも閲覧する事になるので、全く興味のないシュタルクには申し訳ないが共用部分に設けるのが良さそうだ。


 書籍の重量から考えると1階に設けたいところであるが、シュタルクには一切関係ない。フリーレンとフェルンが辿り着ければいい場所という事で、2階の吹き抜けまわりの廊下部分に設けるのがいいような気がする。この本棚を各個室と廊下を隔てる壁代わりに使ってやれば遮音にも役立つだろう。吹き抜けを囲む廊下空間と部屋を分かつ本棚、ここを回廊図書館と名付けることにする。


 そうしてフリーレンのもう一つの趣味と言えばガラクタの収集である。一応魔道具という事にはなっているが、これに関してはシュタルクどころかフェルンも一切興味がない。フリーレンの個室にだけ面する納戸を作って、一人で楽しんでもらえばいいだろう。


 次にフェルンについてであるが、禁欲的な生育環境からか趣味らしい趣味が見当たらない。甘い物や美味しいものを食べるのが好きなくらいだろうか?道具も魔法の杖が一本あるだけだ。シュタルクとの間に子供ができれば、また趣味趣向も変わってくるのだろうが、今の所これといって必要になる機能は思いつかない。彼女に対しては、キッチンの構成を彼女用にカスタマイズする事にしよう。


 一方シュタルクはどうだろう?戦士であるので武器や防具の保管場所が必要な気もするが、今のところ長斧が一本あるだけだ。増えてきたら外に納戸でも作ればいい。トレーニングをするにも専用の部屋を設ける必要はないような気がする。むしろ彼の場合本人ではなく、その人間関係に注目すべきだろう。


 他の二人と違って、彼には師匠と呼ぶべき人間が生存している。アイゼンだ。ドワーフである彼はまだ寿命が残っていて、この家にも度々訪れることが予想されるので客室が必要かと思う。流石のアイゼンも年月と共に体力は落ちてくると思うので、それは2階ではなく1階にあったほうがいいような気がする。独立して閉じた空間にしてしまうと、使っていないときに勿体ないので、普段は開放して居間と一体的に使えるが、来客時だけ閉じて部屋状になる様な仕掛けを設けると無駄がなくていいかもしれない。


 他にもザイン…時にはカンネやラヴィーネも来そうな気がする。利用人数に対して柔軟に対応できるように、客室はベッドではなく板敷きの床に、和式に布団敷きとしてみてはいかがだろう?客室というよりは客間だ。解放はしていても居間と空間の区分を付けるために、小上がりとして床高を40cm程度高くしてみよう。洗濯物を畳むスペースとしても重宝しそうだ。基本的に室内は土足履きになると思うのだが、小上がりだけは裸足の空間としてみよう。来客が無い時はシュタルクのトレーニングスペースとして使ってもいい。シュタルクはよく床で腕立て伏せをしているイメージがあるが、土足歩行の床に手をつけるは衛生上良くない。


 話をまとめてみよう。


 構造は外壁は組積造で、梁や床と屋根は木造。外壁は外側に木材を貼った外断熱工法とする。

 1階には客間とダイニングも含めた居間、それにキッチンと便所、浴室などの水まわりを配置する。小上がりの客間は居間と一体的な使用ができ、建具を使って閉じる事もできる。居間の中央には薪ストーブを設けて上部を吹き抜け空間とする。そこを囲むように配した廊下は本棚で囲まれていて、本棚の向こうには個室空間を二つ設ける。採光と風通しを考えて1方向、又は二方向は個室ではなく直接外部とも繋がる窓を持つ空間とし、個人が集中して本を読めるような空間も作る。フリーレンの個室空間側には容量のある納戸を付属させる。


 さて、これを果してプランとして書くかどうか…それは今後の仕事の状況によるだろう。クライアントにばれたら遊んでないで仕事してくださいと怒られそうな気がする。


 また何か書きたくなるよう気もするがここはひとまず完結にしておこうと思う。

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フリーレン邸新築計画 十三岡繁 @t-architect

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