第13話 ダンジョンを貰った
-side ゼノ-
「報酬についてだけれど、いくつかリストアップしてきたから、この中から選んで欲しい」
スタンピートを制圧した俺は領主の館にてザイクさんから報酬リストをもらった。ざっと目を通す。お金はありがたいことに前のパーティから追放された時の退職金があって困ってないし、貴重な素材はリルに頼めば大体のものは揃う。
うーん、なかなかいいのないなーと思ってリストを最後まで見ると、最後の行に気になる物件が一件あった。
「お、これとか良さそう。このダンジョンが欲しいです」
「え、それで本当に良いのか?」
「……何か訳ありってところですか?」
「い、いや、そういうわけではないんだが、大した資源も出ない初心者ダンジョンだからほとんどの高ランク冒険者は欲しがらないような物件だよ」
領主の顔が引き攣っている。まさか俺がこの報酬を選ぶとは思っていなかったんだろう。
しかし、ふむ。なら尚更ちょうどいい。ダンジョンを改造してすみかにできれば、ここでの拠点になる。
俺は既にこの町を気に入りつつある。飯はうまいし、町並みは清潔でおしゃれ、商業面でも風通しがよく自由な風土だ。領主の有能さがわかるというものだ。
「ふむ。そういうことだったら余っているそこら辺一体のダンジョンと土地を全てをやろう」
「えっ!?良いんですか!?」
「むしろ、スタンピート抑えてくれた人にこんな不良物件押し付けてしまって申し訳なさすら感じる。これは、報酬リストに入っているが、若手の騎士や冒険者を育てるための意味合いが大きい報酬でね。君のような実績のある冒険者用の報酬ではないんだ。それに、今回のスタンピートも元はといえば我々の管理不足。管理する人手が足りなくて、持て余しているダンジョンは沢山あるんだ。むしろこっちからお願いしたいくらいだ。だからこれは、君が疑っているようなこの領地に縛りつけるような報酬ではない」
「うっ……ばれていましたか」
「そりゃあ、俺も仮にはSランク冒険者だからね。俺も昔はよく警戒したものだ。わざわざ、自らその報酬を選んでこちらを揺さぶりに来ることはしなかったけどね」
「あはは」
「もし俺が、この報酬を受け取ったからこの町にずっといてくれっていったらどうするつもりだったんだい?」
「フェンリルを使ってゴリ押してました」
「ガッハッハ!それは良い」
なるほど。そういうことか。つまり、初心者用とはいえダンジョンを若手で目をつけた人に報酬として渡しその人が適切にダンジョンを管理するかみているらしい。若手の育成のためのよくできた報酬だ。
正直、本音を言えば俺はザイクさんが言ったような理由で疑っていた部分がある。すなわち、俺をこの領地に縛りつけるためにこのような報酬を敢えて用意したのかと。でも、よく話を聞いていると、向こうは領地に縛り付けるための報酬だろうということは見抜いてくるということを想定した上でこういう報酬を用意してきてくれたみたいだ。
そこら辺の配慮もしっかりしているのは流石Sランク冒険者だ。冒険者のことをよく分かっていてwinwinの関係を築こうと条件を出してくれる。やはり、この人は信頼に値する人だ。
「俺はしばらくこの町に滞在して、拠点を作る予定です」
「本当かい!?」
「ええ、この町を、領主であるあなたを信頼に値する人物だと判断いたしました。今後とも末長く取引をよろしくお願いいたいします」
「Aランクでフェンリルを従えている大物冒険者からその言葉を引き出せて嬉しいよ。拠点を作ってくれるのも歓迎だ。むしろ、こちら側から本来お願いするべきだろう。今後のことは国と冒険者ギルドのの管轄になるから俺の仕事はここまでだけど、困ったらいつでも頼んでくれ!」
そんなこんなで、俺はこの町、アレーヌに拠点を作ることにしたのだった。
「そうだ、言ってませんでしたけど」
「なんだ?」
「俺実は冒険者引退してるんです。一応、カードはもっとけってギルドからお願いされて持って使っているんですけど」
「――はああああああああ!?」
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追放薬師テイマーの優雅な日常〜ダンジョン内で卵を沢山育てる育て屋さん無双します〜 西園寺わかば @book_hobby
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