第12話 ドラゴンの力

-side ゼノ-



「せいっ!」

「やあっ!」


 

 スタンピートを治めるための戦闘が始まった。人間の冒険者や騎士もちらほらいるが数に推されているって言う感じだったので、駆けつけて正解だったな。

 


『パパー僕も手伝う?』

「エレンは特に何にもやらなくて良いよ?戦いたくなったら戦えば良い」

『んー……じゃあ、ちょっと手伝う』

「分かった。くれぐれもダンジョンは傷つけてはダメだよ。ダンジョンは大事な視点の宝庫なんだ」

「うん。エレン攻撃魔法は使わない」

「うん、良い子いい子」



 子どもだからね。攻撃は大人に任せてサポートに専念すればいいだろう。賢い子だ。

 エレンはそのままトテトテと辿々しい足取りで前にでる。



『じゃ、はじめるー、えいっ!』



 可愛らしい掛け声と同時にエレンは手をかざし、大量の魔力を込めた。次の瞬間、魔物の動きが明らかに数段階落ちた。



「ーーは?」



 なにが起こったんだろう。さっきまで早かった魔物がスローモーションで動いている。

 ゾクゾクするような緊張感が張り巡らされているが、不思議とこちらの動きは悪くない。

 どころか、さっきよりも体が軽く、動きたい。

 


「今のは威圧」

「そー」

『ただの威圧ではあるまい、おそらくエンペラー威圧だろう』

「エンペラー威圧」



 特定のSランク魔物が使ってくると言われる対象を状態異常にしながら、攻撃力防御力スピード命中率などを全てもステータスを数段落とすと言われる伝説の技。同時に、味方全員のステータスを一時的に上昇させるというバグっている技でもある。

 その証拠にさっきまで押されていた騎士さん達があっという間に、そこら辺の魔物を制圧した。

 


『おっと、我らもエレンに遅れをとるわけにはいかぬな』

『戦場に戻ります』



 リルとフェミがそこに加わりものの数十分でスタンピートは制圧出来たのだった。

 圧倒的な従魔達の力を見た俺はと他の騎士や冒険者と一緒に度肝を抜かれながらその場から去ったのだった。あまりの凄さに俺まで敬遠されていた気がするけれど、俺はあくまで一般人ですからー!とアピールしたが無駄だったようだ。

 


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 制圧した後、俺は再び領主の館に来ている。さっきは緊急事態であったこともあり、報酬については話し合っていなかったので、これから交渉である。

 


「なあ、リルさんや」

『なんだ?主人珍しく黄昏て』

「俺は、少し……いやかなりエレンの実力を過小評価していたらしい』

『そうか……まあ仕方あるまい。ドラゴンの実力は我々の想像の範囲で表せるようなものではない。えげつないSランクのスキルや魔法をまるで生活魔法のように使うからなあの方々は』

「あんな少女でも」

『強さに見た目は関係あるまい?出なかったら、強そうではないお前がAランク冒険者になれるはずないだろう』

「確かにそれもそうだ」



 説得感がありすぎる。冒険者ギルドにいると、俺もしょっちゅうよく舐められるがAランクとわかった瞬間に相手の態度が変わることがこれまで何度あったことか。

 とそんなことを話していたら、ドアが開いて領主が入ってくる。


 

「さて、此度はご苦労であった。報酬についてこれから話そうと思う」

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


 



 

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