第11話 スタンピートを抑える

-side ゼノ-



 「む?あそこ?」



  リルに乗って初心者ダンジョンであるーー「アルケー」に向かう。

  中はちょうど立ち入り禁止区画に設定されていて、騎士団が門番をやっていた。こういう緊急時には、領主様の私兵である衛兵はなく、国から訓練を受けたプロフェッショナルが派遣されることが普通だ。



「何か御用ですか?」

「失礼。こういう者です」



 ザイクから貰った紹介状と冒険者ギルドカードカバンの中から出す。



「こ、これは!お通りください!」



 流石、領主の紋章入り手紙。効果は抜群だな。

 Aランク冒険者のギルドカードもこういう時には役にたつ。

 中へ入ると、キラキラとした白色の制服を着ていた金髪碧眼の若いイケメンがいた。多分貴族だろう。



「初めまして。私はセフィルと申します。ようこそおいでくださいました。ゼノ様。こんなところですが、一目見れてとても嬉しいです!」

『パパ、ゆうめいじーん?』

『そのようですね』

『これでもフェンリルたる我を従える冒険者なのだからな。有名になって当然ぞ』



 後ろの3人がそんな恥ずかしい会話をしている。

 恥ずかしいからやめてというのも、余計に違うし後でエレンにはそっと注意しておこう。他2人は言ってもあんまり聞かなそう。



「後ろのお連れ様は、危ないのでこちらでお預かりしましょうか?」

「い、いえ。実は後ろの揺れも従魔でして……」

「へ?」

『僕強いよー?』

『私はまあ、思考の君主ほどではないですが、フェンリル並みには戦えます』

『我は別に休んでても良いのだが、主人が行くと言って聞かんのでな』

「そ、そうですか。人化できる高ランクの魔物が3人も。流石はゼノ様。さらにお強くなられている」

「い、いや。たまたまドラゴンの卵を孵したらフェニックスも一緒についてきただけなんだ」

「……それがもはや規格外すぎると言っているんです。 やはりあなたは出鱈目だ。と言うことは後ろのお二方はドラゴンとフェニックスで間違いありませんね?」

『うん』

『左様だ』

「なら助かります。むしろ、このダンジョンのスタンピートにしては過剰戦力でしょうから、くれぐれもうっかりダンジョンを破壊しないでください」

『善処してやる』

『任せてください』

『むー、頑張る』



 リルとフェニは大丈夫だろうが、問題はエレンだな。

 まだ子供で力加減は苦手そうだ。

 念のため従魔術である程度縛っておくか。



「エレンー、このお薬飲んで?」

『んー?分かったー』



 このお薬はチルポーション、魔物を一定期間落ち着ける作用を持つ。子どもで環境のコントロールが苦手なエレンがうっかりカットなって爆散してしまわないように事前に飲ませる。昔はリルにもよく飲ませたものだ。

 


「よーし。従魔契約で高威力の技は3人とも出せないようになっているし、準備ばんたーん!」

「かしこまりました。流石の腕前です。では、戦場にご案内いたします」


 

 早速案内されて中へ入ると、目の前には大量の興奮状態の魔物、1匹1匹は大した事ないとはいえ、これだけいると脅威だろう。

 


「思う存分暴れていいで、リル。フェニ」

『うむ』



 俺が2人に対して、従魔契約を通してバフを付与すると戦闘が始まった。


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