第1章5-4
宇航(ユーハン)様が仕事で黄有の都へ発たれたのは、私と話した2日後だった。
玄領主と共に皇帝に会いに行かれたのだ。
コック栓付きの陶器については、それぞれの条件を加えた書面に捺印後、売り出す前に専用の工房と、人手を用意し、卸業者も決め、全て手配して朱有を出立した。
ついでに石鹸についても、然周(ゼンシュウ)様が色々動いてくれているので、工房は大忙しだ。
試しに香り付きの石鹸を炎麗(エンレイ)様やその回りの貴族の知り合いに試してもらったら、好評で、売って欲しいと言う要望が炎麗(エンレイ)様に殺到してしまった為、取りあえず、石鹸も商品化することになったのだ。
ただし、泡活草の実には限りがある。なんせ、それまではただの実だったわけで、自生している物しかないため、多くは手に入らない。取りあえず、貴族様達に売るにしても、泡活草の実を使った物は個数制限を設けるしか無い。庶民に卸す物は、泡活草の実がなくても十分に体の汚れや、服の汚れは落ちるし、薬草を使えば、皮膚病の予防や治療にも使える。
師匠や然周(ゼンシュウ)様に相談して、意見もまとまったので、後はその香りと薬草の種類を決める。
まずは薔薇の香りと金木犀の香り、この時期に咲く、クチナシ。この3種類。薔薇は高いけれど、香りを取り出すのに蒸留してみたら、意外に簡単に香りのする水を作ることができた。香りの強い物ならこの方法が簡単だ。金木犀もクチナシもこの方法で香りを取り出す。
因みに日本ではこんな方法は使わない。あくまでも黄仁という国にある物で作る事が前提だ。何故なら、ここにはそれを作る道具自体が圧倒的にないからだ。しかも香りも完璧に取れる訳ではない。ほのかに精製した水に香りがつく・・・その程度だ。それでも、この国では今までにない物であり、貴族に気に入られる。
と言うわけで、この3種類の香りと、蓬を使った薬用石鹸1種類を既製品として売る。
宇航(ユーハン)様が戻るまでに、ある程度の在庫を作っておく必要があると判断して、然周(ゼンシュウ)様が材料を集めてくれたり、材料の値段交渉までしてくれている。
鈴明(リンメイ)も炎珠(エンジュ)も灯鈴(とうりん)さえも、石鹸作りで忙しい。
私は私で、石鹸作りを手伝いながら、鉛筆の構想を練っていたりする。
鉛筆といっても、日本で使っていたような物は難しいが、それに近しい物なら作れそうだ。
鉛筆は黒鉛と粘土から出来ている。粘土はこの地にも存在しているし、黒鉛は墨を使えばいい。後はそれを練れば芯の部分は出来上がる。問題は入れ物だ。
柔らかい木材を円柱型に加工し、半分に割って、中に溝を作る、その溝に粘土を入れ込み、膠で貼り付け、元の円柱型に戻す。細く作る事が理想だが・・・
中の芯が渇いたら、先を削るだけ・・・と言うのが私の草案だが、この忙しい時に、誰かに頼むのも気が引けて、取りあえず材料を自分で買いに行くことにした。
屋敷から出るときは、炎珠(エンジュ)を連れて出るように言われているが、遠くに行くわけでもないし、朱家からお給金が入ったので、思い切って屋敷を出ることにした。
表門を出るとき、門番に炎珠(エンジュ)がいないことで一旦は止められたが、近くの店に行くだけだからと、無理矢理出てきてしまった。
(門番さんが怒られないように、早めに帰ろう。)
そう思いながらも、大通りへ出たら、もう出店に気を持って行かれてしまった。
可愛い飴細工や、山査子飴、それに饅頭のいい香り。それに私を縛る物は何もない。
出店を一軒一軒見ながら、商品を見て回る。
粘土細工を売っているおじさんに、粘土の仕入れ先を聞いて、その先へ進む。
丁度、書道具のお店を見つけたので、墨の安い物を3本ほど手に取り、お金を払う。
黄仁のお金の単位は少し複雑で、日本円にすると1丁が1円、10丁が10円、1銅丸が100円、10銅丸が千円、50銅丸が五千円、1銀板が一万円、5銀板が五万円、1金板が十万円、10金板が百万円、その上は紙札といった感じだ。
山査子飴なら、5丁あれば買えるし、饅頭も15丁もあれば買える。
そんな中、一番安い墨は1本で10銅丸。単純に3本で30銅丸だが、まだ巾着の中身は余裕がある。
最初はお金を持つことも怖かったが、こうして欲しいものを買えるのは嬉しい。
でも、無駄遣いはしない。この先、何があるか分からないから、お金を貯めておく必要がある。
困ったことに、ここには銀行がないので、現金を保管するか、現金に換えられる装飾品にするかだが。
まだ装飾品の目利きが出来ないので、当分は現金を保管するしか無い。
詐欺に遭うのはごめんだ。
途中でかった山査子飴を食べながら、粘土を扱っているお店を目指す。
その間も、いろんな出店に目が行く。同じようでそれぞれの特製があって、見ているだけでも面白い。
粘土を売っているお店は、結局、然周(ゼンシュウ)様の縄張りにあった。つまり、屋敷の裏から出た方が早かった様だが、遠回りしたお陰で、いろんな物を見ることが出来たので、いいとしよう。
お店に入って粘土を両手で持てるくらいの量を買う。5キロくらいか・・・。
粘土は安くて全部で80丁だった。それを支払うと、少し重いが麻袋に詰めてもらい、抱えて店を出る。店主は私の足を気にして屋敷に届けると言ってくれたが、それを見られたらまた師匠達が大騒ぎするかも・・・と考えて自分で持ち帰ることにした。
ついでに、木材店にも寄って色々見せてもらって、加工しやすそうな桐の木材を調達した。2メートル程で5銅丸。
長いと持ちにくいので、50㎝くらいに切ってもらい、束ねて紐でくくる。
店を出て、このまま裏口へ帰ろうとしたときだった。
後ろから、視線を感じる気がして振り返る。だが、私を見つめている様な人はいない。
気のせいかと、前を向いたとき、一人の男が私の前に立ちはだかった。
何か分からず、よけようとすると、男も私について横へずれる。
それで、ふと男の顔を見ると、見覚えの無い顔だった。外見で判断するのもどうかと思うが、いかにも悪人です、見たいな顔つきの男だ。
「すいません。通して頂けますか?」
そう言って、また横へずれると、男も付いてくる。
「何かご用ですか?」
昼日中の町中で、しかも人目がある中で、何かするとは思えないが、恐怖を覚え、逃げられる場所を目で探す。
「お前、桜綾(オウリン)って言うのか?胡家にいた桜綾(オウリン)で間違いないか?」
(なに?何がいいたいの)
「これをお前の弟から預かった。ちゃんと渡したからな。」
私の返事を待つまでもなく、そう言って紙の封筒を押しつけられる。それを受け取ると男は、そのまま去って行った。
正直、怖かった。男が去った後も、少しの間、呆然としてしまった。
我を取り戻して、少し早足で裏口へと急ぐ。
時々、後ろを振向きながらできる限り早く。持っている粘土や木材を疎ましく思いながらも、裏口の門番さんが見えた所で、やっと胸をなで下ろした。
「桜綾(オウリン)様!どちらに行かれていたのですか!」
門番さんは私が外にいることに驚いていたが、表から出たのだと説明すると、早く屋敷に入るようにと、半ば押し込まれるように門をくぐった。
そこへ角の生えた炎珠(エンジュ)がやってきた。どうやら門番との会話が耳に入ったらしい。
「お・う・り・ん・様。どこへお出かけで?」
顔は笑顔だが、剣を片手に腕組みして仁王立ちされたら、さっきの男など比では無いほどに怖い。
「ひぃぃぃ。ごめんなさい!ちょっとそこまで買い物に・・・」
「私も連れずに、ですか?私の職をお忘れですか?私は石鹸作りが本職だとでも?」
「炎珠(エンジュ)、分かってる、分かってるから。炎珠(エンジュ)は私の護衛です!」
組んでいた腕を崩し、私の横へ移動すると、さっさと荷物を私の手から奪い取る。
「次は許しませんから。私がいないときに出さないよう、門番にもキツく灸を据えなくては」
「門番さんは悪くないの。止められたんだけど、無理を言って通してもらったの。次からは絶対しないから。門番さんを怒らないで。ね?ね?お願い。」
私は手をすり合わせて、炎珠(エンジュ)に謝る。
「本当に次は無いですからね。しかも重いものをその足で運んで来るなんて。無謀にも程があります。これはどこに運ぶのですか?」
ため息をつきながらも、荷物を運んでくれようとする辺りは、炎珠(エンジュ)らしい。
「これは私の部屋に。後、師匠達には言わないでね。今は忙しいから、そっちに集中して欲しいの。私も用が済んだら、すぐに工房に行くから。」
炎珠(エンジュ)は言ったとおり、荷物を私の部屋へと運んでくれた。机の後ろにそれらを置くと、部屋を去って行った。
机に突っ伏して、男への恐怖と炎珠(エンジュ)への恐怖を落ち着かせていたら、胸に当たる紙の感覚で思い出した。
「弟から預かった・・・」
男はそう言っていた。弟とは文葉のことだろう。今更何の用があるのか・・・まさか助けて欲しいとか?謝罪の手紙とか?
茶色の封筒を机の上に出し、それを眺めながら、内容を想像しつつ、開けるか開けまいか悩んだ。
表には「親展 桜綾(オウリン)様」の文字。
今は使用人となっているはずなのに、どうやってこれを書いたのだか。
好奇心が開けたいと言っているが、捨ててしまえと言う恨みの声もある。幸せな時間が過ぎていただけに、手紙一つで動揺している自分がいた。
(読んで無視すればいい)
そう思って一気に封を切る。中身は2枚の手紙。それをゆっくりと開く。
ギュッとつむった目を開けると、綺麗に整列した文字の一部分、一部分が目に飛び込んでくる。
それは、開けなければ良かったと思わせるには十分な言葉の羅列・・・
「桜綾(オウリン)様
さぞかし満足していることでしょう。僕達が今、どんな状況に置かれているかも、考えもせず、おいしいものを食べ、温かい布団で眠り、毎日を過ごしているのでしょう。
飯もろくに与えられず、薄い布団で眠り、重労働させられた挙げ句、罵られる僕達を助けようともしない。
同じ血を分けた姉弟なのに、なぜこんなことをされなければならないのですか?
確かに、僕達が姉さんにしたことは、間違っていたかも知れない。
けれど、姉さんも母上にひどいことを言ったではありませんか。
それが原因で姉さんが怪我をしたとしても、姉さんが先に母上を傷つけた。
その事実を、朱家の領主様を味方に付けてねじ曲げ、僕達をここに送り、父上を僻地へ送った姉さんが憎い。
母上は、日に日に痩せ細り、泣いてばかりで、病を患いました。
もし、姉さんにまだ、心が残っているのなら、僕達をここから出すように、領主様に願い出てください。
願い出てくれなければ、僕は死んでも姉さんを恨み続けることになるでしょう。
父上や母上がいたから、姉さんが生きて来られたことを、努々(ゆめゆめ)お忘れ無く。
文葉 」
それを呼んだ瞬間に、私は吐いた。胃からせり上がってくる物を押さえられず、その場に戻してしまった。
慌ててそれを拭こうとして、手巾に手を伸ばすものの、足がぐらついてその場に倒れ込む。
その衝撃で机の上の物が、体の上に落ちてきた。
腕に衝撃的な痛みと熱さが走る。血が流れているのは、机の上の小刀が腕に刺さったせいだ。
小刀を取りあえず抜いて、立ち上がろうとするが、上手く立てず、それでも何とか這って手巾に手を伸ばす。
そこに、物音を聞いて入ってきた灯鈴(とうりん)が、叫び声を上げるのが聞こえる。
「桜綾(オウリン)様!あぁ何てことでしょう!誰か、誰か、早く医者を!」
そういいながら私の側に来て、私の上半身を抱き上げる。
「灯鈴(とうりん)、大丈夫だから。それより、灯鈴(とうりん)の衣が汚れるわ。先に、ここを拭かなくちゃ。」
そう言いながら、手巾を取ろうとする私を灯鈴(とうりん)が戒める。
「桜綾(オウリン)様、動いてはなりません。私の衣など良いですから、とにかく血をとめなくては。」
私が手を伸ばして取ろうとしていた手巾を手に取り、灯鈴(とうりん)が私の腕の傷の上から強く巻き付ける。
「桜綾(オウリン)!何してるの!」
灯鈴(とうりん)の叫び声につられてやって来た、鈴明(リンメイ)は惨状を見て、灯鈴(とうりん)に負けないくらいの声で叫ぶ。
一緒に来た炎珠(エンジュ)は状況を見て、慌てて外へ走り出す。
師匠と然周(ゼンシュウ)様は、私の体を抱え、寝台へと運ぶ。
「何があった?どういうことだ?」
状況の見えない二人が灯鈴(とうりん)に聞くが、灯鈴(とうりん)が来た時には、もうこの有様だったのだから、原因など知るよしもない。
「大丈夫。ちょっと気分が悪くて、戻しただけだから。それで転げちゃって、運悪く小刀が腕に落ちただけ。ごめんなさい。心配かけて。」
そう言って笑うと、灯鈴(とうりん)が怒る。
「大丈夫じゃ無いですよ。一体、どれだけ怪我をすれば気が済むんですか?痛いなら痛いと泣けば良い物を!」
「痛いけど、泣くほどではないの。それより、衣の替えをくれない?汚れちゃって・・・」
戻した物と血で衣が汚れて気持ちが悪い。
「衣の心配している場合か!」
師匠が怒鳴るが、灯鈴(とうりん)は察してくれたらしく、然周(ゼンシュウ)様達を部屋の外へ出して、着替えをさせてくれた。
鈴明(リンメイ)もそれを手伝いながら、汚れた体を拭いてくれる。
着せ替え終わると、灯鈴(とうりん)が私の戻した場所を手早く掃除し、換気をするために窓を開ける。
それから師匠達を部屋へ入れた。
師匠達が来たところで、何も出来ないが、灯鈴(とうりん)が掃除中に見つけたあの手紙を、師匠に渡す。
「あっそれは・・・」
止めようとしたが、遅かった。師匠は受け取った手紙を見て、みるみる顔色を変える。
それを隣で見ていた然周(ゼンシュウ)様も表情に影を落す。
「これはなんだ?いつ受け取った?」
師匠が低い声で話しているときは、本気で怒っている時だ。
「さっき、買い物に出たとき、知らない人に渡された・・・・」
「さっきって、お前、一人で外に出たのか?」
「うん。」
「お前は馬鹿なのか?何の為に宇航(ユーハン)が炎珠(エンジュ)を付けたと思っているんだ?まして、なぜこんな手紙を読んだ!この手紙のせいだろうが、お前が気分悪くなったのは!」
その通り過ぎて、何も答えられずにいると、
「落ち着け、憂炎。お前より、桜綾(オウリン)の方がきついはずだ。お前まで怒鳴ってどうする。」
然周(ゼンシュウ)様が師匠を落ち着かせようとする。
「好きで怒鳴っているわけじゃない。大体、俺はこの手紙に怒ってるんだ!」
「分かった。分かったから。とにかく今は桜綾(オウリン)の治療が先だ。話は後でも出来るだろう。」
丁度その時、炎珠(エンジュ)が医者を連れてやってきた。
傷は深く、止血と皮膚をくっつけるために包帯でグルグル巻きにされた左手は、固定され、動かすなと言われた。
こんな物、縫ってしまえば早いのにとも思うが、そんな技術は無い。
痛みと熱が出るので、それを緩和する薬を処方された。
当分、左手は使えない。利き手でなかっただけマシだ。
鈴明(リンメイ)は夜になっても帰らず、私の側に付いている。あの後、師匠から手紙をぶんどり、鈴明(リンメイ)もそれを読んだのだ。
その怒りは師匠をも超えるほどだった。顔は真っ赤になり、師匠が止めなければ、手紙を塵にしていただろう。
鈴明(リンメイ)から手紙を取り返した師匠は、自分の怒りも忘れて、鈴明(リンメイ)を宥め賺した。
その後は、ずっと私の側から離れようとしない。
「鈴明(リンメイ)、大丈夫だから、休んで。石鹸を作るのも大変でしょう?」
「大丈夫じゃ無いでしょ?熱だってあるし、傷だって痛むでしょ。私は元気だから。私が倒れたら、その時は桜綾(オウリン)が世話するのよ。私を。」
「分かった。その時はこれ以上無いくらいに尽くさせて頂きます。」
そう言って二人で笑う。
怪我や病気なんてしない方がいいに決まっている。だから鈴明(リンメイ)が元気でいてくれるように、私は気をつけることで、恩を返すことにする。
文葉にもらった手紙を気にする必要は無いのかも知れないが、何故か、心が痛んだ。
私が宇航(ユーハン)様を味方に付けた覚えはないが、そう見られても当然だ。今や朱家の人間なんだから。
でも、はっきりしたこともある。義母も文葉も、自分が置かれている状況は、以前の私だと分かっていないという事。
そして、私にしたことを全く反省はしていないと言うこと。
それは分かっていたことだ。絶対にあいつらが反省しないだろうと。
でも、それなら何故、こんなにも心がざわつくのか。
桜の記憶が、それは期待だと言っている。
私の心のどこかにあいつらが反省するんじゃないかという、甘い期待があったのだろうか・・・
自分の気持ちなのに分からない。
ざわつく気持ちも、胸の痛みも。
何故、私が憎まれなければならないのかも。憎むべきは私がされてきたことの方なのに・・・
そう考えたら、次は怒りが湧いてきた。
いろんな感情が浮かんでは消え、消えては浮かび、思考が全く止まらない。
「ねぇ鈴明(リンメイ)、私はそんなにひどい人間なのかなぁ・・・」
「あの手紙のせい?桜綾(オウリン)は何も悪くないでしょ。当然の罰が下っただけで、桜綾(オウリン)がひどい人間なら、あいつらは何?」
「義母はともかく、父と文葉は半分同じ血が流れているのに、助ける気になれない。そんな自分が怖いの。」
鈴明(リンメイ)が寝台の縁に座って、私をそっと抱きしめる。
「桜綾(オウリン)は何も悪くない。それにいくら血がつながっていても、つながっているからこそ、してはいけないことをしたのは、あいつらの方よ。だから自分を責めたりしないで。ここにいる人は、皆、桜綾(オウリン)が大好きなんだから。」
「どんな事があっても、私は桜綾(オウリン)の味方だよ。それに、私は桜綾(オウリン)に感謝してるんだから。桜綾(オウリン)と仲良くなってなかったら、朱家なんて来られなかった。桜綾(オウリン)は私を幸せにしてくれたんだから。ひどい人間なんかじゃない。」
鈴明(リンメイ)の体温と言葉が、私を落ち着かせてくれる。
「いつもありがとう。手紙一つで動揺しすぎね。大丈夫。私には皆がついてるものね。」
「そうだよ。だからこれからは、これ以上、傷が増えないようにしなきゃね。」
そう言って体を離すと、私に寝転ぶように促して、頭に手巾をおいてくれる。
それから、鈴明(リンメイ)は桶の水を換えに部屋の外へと出て行った。
黄仁の花灯り 鳥崎 蒼生 @aoitorisaki
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