神から鬼へ、祝いまで

千崎 翔鶴

翁-神男女狂鬼-附

 滝の水 とうたらとうたり 流れ落ち

 御代とは斯様かように 落ちゆくものか



 世の中に 薬の水は なきゆえ

 老いをいとうて ささおぼるる


 うららかな のどけき湖春こしゅんの 水鏡みずかがみ

 月のうさぎも 水面みなもを走る


 の山は いとものものし 嵐の名

 はかなき花は 風に散りゆく



 梶原かじわらの 悪名高き 父あれど

 えびらの梅は 語り継がれる


 ただ頼め しめぢが原の さしも草

 さて観音かんのんは 何処いずこに在るや


 弓流し おのめいより めい取ると

 身をさらしても けがれをいと


 苦しみの 修羅しゅらの姿を 見らるるに

 おのれを恥じて ほむらに消ゆる



 在原ありわらの あとたずぬる 杜若かきつばた

 男か女か あるいは花か


 行平ゆきひらと 松にすがるる 松の風

 めし時には 村雨むらさめとなる


 筒井筒つついづつ 幼きころの 約束は

 切れぬよすがか 消えぬ呪いか


 山のの 心も知らで 行く月は

 来世こんよちぎりに 顔をうつむ



 ざらざらと あみすくうは 桜花さくらばな

 我が子の名ぞと 探してくる


 たずに 辿たどり着きたる 成れの果て

 これは我が子か それとも風か


 しいされて それでも何故なにゆえ 歓喜する

 呂水ろすいに沈みし 天鼓てんこまい


 亡き人の かたきを討てぬ 狂乱に

 持ちたるばちをば つるぎと定む



 髪長かみながの 破戒におののく ぐらつきの

 少女は無垢むくか あるいは化生けしょう


 はし鷹の 野守の鏡 えてしかな

 人の真実まことを 知りたきものよ


 西海さいかいに 流されゆくは うつほぶね

 浮くか沈むか 沈むか浮くか



 海上で よいに舞う 猩々しょうじょう

 つきせぬ宿こそ めでたけれ

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神から鬼へ、祝いまで 千崎 翔鶴 @tsuruumedo

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