【後編】 黄金ノ立夏
立夏。
私と彼、つまり一台と一人は決戦の地に
「俺らだけに、なっちまったな」
『そうだな。私の仲間も
運転席に座る
私は一年前〝敵〟を追って四人の仲間と共に地球に降り立ち、人間と協力し戦い続けてきた。
「戦隊や勇者が死ぬような展開は、過去一度もなかったぜ」
『ああ、私も
この地球は一年という
五人の戦士、あるいは五台の
毎年、最終的には立夏の頃〝人間側〟が勝利しており、
「明らかに今年はおかしい……いよいよ
『同感だ、
普段は
「もうすぐ、海か……
『
運転席で指を鳴らす
*
「まるで効いちゃいねえな」
『やはり、我々が内側から叩くしかあるまい』
艦から飛び立つ航空戦力も、艦そのものから発射される戦術核も、洋上の空中要塞ラ・ソノマ・アンギンペには
「上がれッ!
『力を借りるぞ、
敵との戦いで命を落とした〝
「最深部には絶対に
『分かるさ、私と君は
何より、戦闘の余波で
「おう! それに見ろ……奴だ。あの野郎は俺が直接ブチのめすッ!」
『ならば、進路に合わせて
「助かるぜ
『私は撃ちやすい
米国製、世界最強の
NASAが開発し
その二つを私が両手両足に装着し終わる時、
変身、それが〝
*
「
「イケるぜ
『了解ッ! 投下後、私も援護するッ!』
おびただしい量の
「勝てると思うか? 俺達、二人で」
『大丈夫だ。それに、仲間の力を受け継ぐ私達は五人と五機だろう?』
一人と一機ではなく〝二人〟と言ってくれる
『
「間違いねえ、正真正銘……これで終わりだ」
半世紀の記録、海底から、地底から、異次元から、数々の脅威が人類に牙を
「お前らの情報だと〝宇宙〟も連中でラストだろ?」
『ああ、我々の戦いの歴史も送信した通りだ』
人類が隔年で五人の
『すまないな
「私が、じゃなくて〝私達が〟だろ? いくぜ!」
*
最深部に到達した私の
理由は〝敵〟の姿と、力。
「アイツ! 親玉なら
『内部構造の組み換えだと……
私達が
私達が敗れた仲間の部品を集め、足りない部分は自らの
「
『やはり、完全形態には太刀打ちできないのかッ!』
白き翼、腕から背面に移動した二門の巨砲、青き
それらを集結させても、私の体は
『ヌハハハッ! そのような脆弱極まりない
「だったら、左手……
『ダメだ
奴の体は、真っ黒な
私達の三倍以上の巨体に豊富な装備、
似ているのは外見だけではない、力も技も戦い方も、そっくりだ。
勝てる、はずがない。
諦めたくはない、諦めてはいけない、だが、蛮勇と無謀は違う……打つ手が、見当たらない。
*
「なあ、
『
そして
『ぶつぶつと何か言っておるな、
彼は
「行くぞ、
『チェーーンジ……
奴は、黒色の
増やせば、補えるッ!
奴一人に出来て、私達二人に出来ない道理はないッ!
『無駄な
全身の筋肉、果ては臓器にまで深刻な被害を負い喀血する
何故なら、
全体の回路、駆動系も循環する
何故なら、
『な、何だと? 全ての
戻ってきた。
「お前ら……くたばる前に、いっぺんだけ力、貸しやがれ……」
『
私と
「『
そして、右の
左の
胸部中枢の上も両腕と同じく燃え上がる赤き装甲を重ね強化し、仕上げに頭部を
「生きてっか? 相棒」
『どうにかな……勝つぞッ!』
紛い物たる黒色の
『貴様ら、その姿は……まさかァ……!』
五つに振り分けた〝力〟が
何故なら、私達は〝
*
激戦の中、
奴は崩壊する要塞から飛び去り、私と
『ヌハハッ! 要塞は
つまり、成層圏。
「チッ……悔しいが俺らが消耗してんのは事実だな」
『らしくないぞ?
一騎打ち。
軽口を叩いてみるも、
「確かに……俺らしくなかったな。百パーセントで足りねえなら、上回るしかねえッ!」
『その通りだ、
「燃やせ、全てを……超えっぞ、限界をッ!」
『望むところだッ!』
奇跡を、起こす。
『粒子……だと?
私と
全ての
『色が変わったからといって、それがどうした! 我に貫かれ、彗星のように燃え尽きろ!』
それは、
私自身も知らなかった、
全ての装甲が、関節部が、金色に輝く。そして緑色の粒子がとめどなく放出されている。
「燃やせ、輝け、
『最後の一撃だああああッ!』
黒き
*
「兄貴、みんな、ありがとう」
『逝ってしまったようだな』
「なあ……お前まで消えたら許さねえぞ」
『当然だ。君を日本に送り届けるまでは、持ちこたえてみせる』
そっから先もずっとだ、と
焦りながら、それでも重症の
日本を目指す、関東圏、東京都、もう少し。
数時間前、夕暮れに出発した
「ふざけんな、死ぬな……死ぬんじゃねえ
『お別れかも……しれない。この四トン
視界が、メインカメラから見える映像が、ノイズ交じりになる。色彩が失われ、景色がモノクロに変わった。
「忘れんじゃねえぞ、俺達は一生……
『ああ、忘れないさ……私達は、ずっと……』
*
あれから何年が経ったのだろうか。
信じられないことに、車内のドライブレコーダーを介して私は外の風景を
しかし自身の客観視は不可能であり、変形や発話などもっての
「おじさんの車、地球を救った車なのー?」
「おう、ずいぶん小さくなっちまった」
普通に立っている、歩いている、会話をしている、後遺症もないようだ……本当によかった。
「わ! 今、勝手にライト光ったり消えたりしてた!」
「マジかよ? まあ、アイツが起きたなら光っても不思議じゃねえな」
「全然、光らなくなっちゃったね」
「やっと起きたばっかなのかもしれねえ。無理せず、ゆっくり様子を見るよ」
かつて世界に〝最後の戦い〟があったこと、命懸けで戦った勇者がいたことを。
「この子は……名前あるの?」
「あるぜ」
私の名は。
カナリーイエロー。
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