立夏×カナリーイエロー

トモフジテツ🏴‍☠️

【前編】 終わる季節、黄昏の空


 立夏。


 それは〝俺達〟にとって〝終わり〟の季節を意味する。


 今年だけではない、過去の〝俺達〟にとってもずっと、この半世紀の間ずっと立夏は……終わりだ。

 戦いが始まった最初の二十年や三十年なんかは三月中に終わって、四月から新たな戦いが始まった循環サイクルも存在したらしい。


「……もしもし、その声は長官か?」


 着信に気付き携帯スマホを手に取った俺の耳元に聞こえるのは、観測員オペレーターではなく渋みのある壮年の声。


『いつもと違ってわしが連絡をした、この意味が分かるな?』


 敵のお出まし、これは最後ラストかつ最期フィニッシュ……そして、ややもすれば終幕フィナーレなのかもしれない。俺は玄関を開き相棒バディドアを開け、乗り込んだ。


「搭乗完了、いつでも出れるぜ」

地点マーカーを送信、太平洋上で連合艦隊と合流せよ』


 車両トラックキーを差し込むと、勝手に回り内燃エンジンが温まる見慣れた光景に感慨かんがい深さを覚えながら安全紐シートベルトをつける。


「運転を始める、切るぞ長官」

『了解……この地球を、頼む』


 夕闇に包まれる薄暗い庫内ガレージおもむろに一瞬だけ明るくなるのは、車両トラックが自分の意思で光源ヘッドライト点灯パッシングしたからだ。


休眠スリープじゃなかったのか」

『私は起きてたさ、ずっと』


 俺は車内に響く優しげな青年の声と会話する。


 相棒バディの名、それは……


 カナリーイエロー。


 

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