デモンズスレイヤー 

弦本スージー

第1話 穢れた子孫を断ち切るために

柔らかな灯りが、評議会の長、カシマ=ソウイチロウ様の姿を照らしていた。総主教陛下の前に跪くその姿は、重要な使命を背負った者の風格を漂わせている。


「陛下、その足と腕の調子はいかがでしょうか?」ソウイチロウの声は、謙虚でありながらも決然としたものだった。


総主教は椅子に身を乗り出し、ゆっくりと顔を上げた。「問題ない。それより要件は何だい?」彼の声は厳格さを帯びていた。


ソウイチロウは表情を引き締め、次の言葉を述べた。


「バイヲンエネルギーが社会に広まってからというもの、上層派閥はますます政りごとにふけっています。このままでは教典は忘れられ、アルパスは崩壊してしまいます。そこで、評議会はこのたび武装組織を設立しました。東大阪の都市部では、いまデモンズという穢れた存在が跋扈しています。それらを洗礼により東大阪をあるべき姿に持っていくべきです」


「デモンズにも洗礼を許可してもらえないでしょうか?」ソウイチロウの声には熱意が込められていた。


総主教は深く考え込んだ後、重要な決定を下した。


「オメガの長、ソウイチロウ。そのデモンズは人ではないのか?都市部を見たときには、悪魔のようなものはいなかったぞ。しかし、これも教典の成就のためだ。洗礼で了承したものには武装組織預かりとしてもらえるなら許可を与えよう」


後暦2020年5月2日、アルパスのデモンズ狩り、通称デモンズスレイヤーが活動を開始した。


アースライト計画、通称機天使創造計画がこの時、評議会で推進されていたことは、後にアルパスの僧侶たちが知ることとなった。


2020年5月16日、デモンズスレイヤーは今日もラブホテル街に侵入し、穢れを清めた。アルバさま、これはどういうことですか? あれは人間ですよ、デルタの民がベータに進言した。


アルパス教は、穢れた人類を悪魔と定義し、それを抹殺する組織を創設した。その組織はデルタと呼ばれ、ラブホテル街を一つ一つ崩壊させていった。性行為を行った者には洗礼を施し、悪魔には死を与えた。悪魔の正体は同じ人間であると知らずに駆り出された。デルタのベータたちは、それを知っていた。敬虔な教徒たち、僧兵たち。アルバはベータを粛清するためにデルタの長となった。デモンズスレイヤーとして身を捧げ、人を穢れから解き放つことが大切だと考えた。人は人として行き過ぎた。3年後に目覚めるあの方に…


「アルバ隊長、お前はそれでいいのか? デモンズは私たちと同じ人間ではないのか?」デルタの一人が長であるアルバに問いかけた。


「ベータ、あれらは人の理から外れた存在。故に洗礼、つまり殺すことが祝福なのだ」ベータに対してアケナは言った。


「ベータ、あれらはもはや経典上の人間ではない。もはや悪魔、我々はそのためのデモンズスレイヤーなのだ」


「アケナ、あなたまで…」


デルタの組織にヒビが入りかけていた。時は2020年。ガズールの帰化人の受け入れで豊かな生活を過ごしていた東大阪は、混沌の中にかろうじて楽園を保っていた。

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デモンズスレイヤー  弦本スージー @suzy_tsurumoto

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