第二話 私の能力を使いましょう 中編

無事、彼女の部屋まで辿り着き何事もなくベビーベッドに入れた。

一度、上を見上げてみると綺麗な青空が見えていて、さらに下に生えているであろう木が窓から細く見えていた。

「少し、眩しいかな?」と言ってから彼はフッと掌で何かをすると、何も触れていないのに左右にあるカーテンがサーッと動いた。

「これでよし」と言ってから一度ミレイナの頭を優しく撫でてから部屋から退出し仕事に戻ったのでした。



その夕方、転た寝してようやく目が覚めた時、目の前に瞳をギラつかせた数名のメイドが立っていた。

その中に先程鑑定したメイドも立っていた。

「こんばんわ、ようやく起きてくれましたね。お嬢様!」と言う茶髪の恰幅の良いメイド。

「寝顔、とっても可愛かったけど時間がありませんです!」と黒髪でおかっぱの髪型をして丸メガネをかけたメイドがブラシを持って言ってた。

「急遽、晩餐会を始めるとは驚きでございます!おしゃれしなくては!」と薄茶色の髪を持っていて頭の上に団子を着けたメイドが複数の赤ちゃんドレスを持っていた。

あまりの勢いにいつもの鑑定をするつもりがお座なりになり名前と年齢が見え、心の声を聞いてしまった。


〈コレディ鑑定済み〉

〈心の声;お嬢様が晩餐会に呼ばれるなんて何か良いことの兆しでは!?〉

〈ウェリー 32歳〉(茶髪)

〈心の声;息子の服しかやってこなかったけど一度くらい可愛い娘を着飾ってやりたかったわ!!〉

〈キレディ 18歳〉(黒髪のおかっぱ)

〈心の声;夢だったのよね~!〉

〈ディジー 23歳〉(薄茶髪)

〈心の声;今も可愛いのにまた可愛くなるの!楽しみだわ~!〉


(ディジ-というこの人は少し…)と言いながら目線を動かし、軽く距離は離れたいと密かに思うのだった。

それからというものメイド達に隅から隅まで綺麗にされそして、汚れが付いてしまったら危険なドレスに着替えさせられた。

淡い紫色のフリフリがついた赤ちゃんドレス、白い靴下を穿かせられた。

頭には白いリボンカチューシャを付けられていた。

その格好を見るため、一人のメイドが姿見を何処からか持ってきたようだ。

そしてそれを、彼女の前に持っていきミレイナの今の格好を見せてくれた。

(わぁ。元が可愛いから何でも似合うのね…)と自画自賛しているところに不意にドアがノックされる音がした。

それで音に気づいたディジ-が率先してドアに近づきこう言った。

「どちら様ですか?」と警戒の言葉を放ってノックした相手は何も気分を害せずこう言った。

「賑やかなところ悪いけど入って良いかしら」と敬語を使わず、落ち着いていて気品のある女性の声がした。

そして、とても馴染みのある声だった。

(母様だ)と心の中で相手の正体について答えた。

それで、彼女が扉を開けると入ってきたのはやっぱり母親だった。

母親は銀髪の長髪なんだけど、その長さが鬱陶しく思っているのか分からないが豪華な巻き髪のポニーテールにしていた。

そして、元から美人なお陰なのか化粧は控えめなものだった。

「迎えに来たのだけど、準備は終わってる?」

そう聞いてから、ドレスアップされたミレイナを見つけてキラキラと目を輝かせた。

「まぁ!こんなに可愛くなってるなんて、さすが私の天使だわ!!」と言いながら、スタスタと彼女の前まで近づいていき、手の届く場所まで着いた。

(褒めすぎ…)と照れ隠しのような心の文句を吐いてから母親が求めそうなことを叶えるため両手を上にあげた。

その間にも、母親のステータスがフォンっと現れた。


〈ユーウェリア・フォーエレン 伯爵〉

〈 35歳 女性 専業主婦 〉

〈今日は特別な晩餐みたいだし、何処かに行くのかな?〉


彼女からは娘に対する愛情は若干少ない感じがするけど、少なからずミレイナを娘として見ていることは確かだった。

(この人のことは多少疑った方が良いみたいね…)と考えてからガシッと彼女の布を掴んだ。


ミレイナには隠された能力がまだある。

鑑定は彼らに見られても大丈夫なスキルの一つだが、ある程度育ってないと判明されてはいけないスキルがある。

(“召喚”)と心の中で呟くと彼女にしか見えない白い空間の入り口が現れ、その中から一羽のカラスが出てきた。

そのカラスには主人以外には只のカラスが見える認識阻害と透化スキル持ちである。

さらに彼女側には出した使い魔の声を聞くことが出来る。

今はレベルが低いためそれだけしか能力がないのだが、今に至ってはそれで十分だった。

(母様を見張って)

ここまで実の母親にまでこう言う考えなのは、今に始まったことではない。

初めて会ったときには愛情たっぷりな表情を見せるけれど時が経つにつれ、ノイローゼに近い症状が見え始めていた。

それが現在の彼女の状態である。


今に戻って、喚び出したカラスを先程の命令にしてからそれは母親に付きっきりに動いてくれた。

今は目立たないように透化を使っていた。

「では、行きましょうね」と言ってからゆっくりと抱え直してから部屋から退出した。


それから程なくして晩餐が行われる食堂ホールに着くと既に父親が上座に座っていた。

「待っていたよ」と開口一番にそう言うと母親はミレイナを専用の赤ちゃん椅子に座らせて、そしてその隣に母親が座った。

「やぁ!」と声をかけてくる人がいた。

それは、彼女の目の前に座ってる薄紫色の髪を持った美少年がいた。

彼はミレイナのことを快く思ってるのかにこやかな笑みを浮かべていた。

(そういえば“兄”と呼べる人間がいるって噂で聞いてたわね)

今まで会えなかったのは後継者にするための勉強があるようだからだろう。

でも、一度も“会ってない”は可笑しいか、もしかしたら自分が寝ている間に自分を見てる可能性が浮上した。

そうすると、彼がミレイナに対して好感度が高いのはそういう理由なんだろう。

それで予めステータスの方を確認した。


〈ルーネ・フォーエレン 後継者〉

〈男性 8歳〉

〈この子が僕の妹か可愛くて護ってやりたいなぁ〉


そんな庇護欲を擽っているような心の声に少し引き気味に身構えてしまった。

「ごめん、緊張させたかな」と彼女の反応に気づいたのか少し不安そうな表情を見せた。

ルーネは本当に素直な表情を見せてくれるのでミレイナは大丈夫と思わせるような笑みを浮かべた。

それを見て彼はホッと息を吐いた。


その時、父親が自分の存在を気づかせるために一度咳払いをした。

気づいたルーネは慌てて姿勢を正し、一度父親の方に顔を向けてから「ごめんなさい」と謝罪を口にしながら頭を下げた。

そして、父親が右手で指をパッチンと鳴らすと二人が入ってきた入り口が開き、そこからワゴンを押す数名をメイドと数人の執事が現れた。

「シェフの腕によりをかけた料理だ。それとミレイナには栄養たっぷりの牛乳だよ」と自慢げに料理の配分を言った。

そして皆に行き渡った後、見渡してからこう言った。

「食事の前に一つ行いたいことがある。皆で領地に散策したいと思うがいいか?」

そう言うとルーネはあまりの驚きに思わず彼の方を見てしまった。

「本当なんですか!お父様!!」と言いながら勢い良く立ち上がりそうになった。

「本当だが。ルーネ、少し落ち着きなさい。せっかくの料理がダメになってしまう」と彼の質問に答えながら穏やかな声で叱っていた。

それを聞きながら、ミレイナは皆の心の声を視ていた。


家族みんなで行けるなんて!!〉と感激の声をあげるのは兄であるルーネだった。

〈お出掛けですって…何着ていこうかな〉と少し気だるげに言う妻だったが、やはり言葉の後ろに不穏な影は消えていなかった。

(絶対派手なドレスを着ていくんだろうな…ちょっとそこら辺は父様に頑張って欲しいけど…)

そう思いながら父親の心の中を見るとさっき言った言葉とは別の考えを巡らせていた。


〈これを機にあの孤児院が何か尻尾を出せば良いんだが…〉


そうこれは家族で行くのはただの口実。

本当はミレイナが示した孤児院に行くつもりだ。

ただ貴族としてく行くのは悪手だと思う彼女は少し手助けした方が良いと考えた。

今ではなく現場で…。

今必要なのは母親だ。

いいうえちちうえ

その言葉を言った瞬間その場が凍りついた。

その時、ミレイナはハッと青ざめた表情を浮かべた。

(しまった…思わず家族のを言っちゃった…)

いつも気を付けてきたのに思っていたのについ集中が切れたタイミングで口に出しちゃった。


彼女が初めて聞いた“父上”という言葉に呼ばれた彼とそれを聞いたルーネは少しずつ頬を赤く染めていった。

「初めて…呼んでくれた…」と感極まってるのか父親は声が震えていた。

「ほぁ…いつか僕も呼んでくれないかな…」とあまりの可愛さに変な声を出しながらそう言った。

端から聞いていた母親はやや冷ややかな視線を送っていた。

これ見よがしにミレイナは心の中で咳払いをした。

「いいうえ、おっともっとおえいおやいくしてうさい女性をやさしくしてください」と強い指摘を言った。

その瞬間二人がピシッと凍りついた。

二人は何かに気づいたのかゆっくりと母親の方を見やった。

それで彼女が別のことを考えている様子に気がついた。さらにいつもと違う態度にも。

「因みに言うが貴族として行かない、領民のような身軽な格好で視察に行くのだが分かっているか?」とまるで試すような言葉を言いながら母親に見やった。

すると、彼女はそんなことにも気づかずに「あら、そう」と少し嫌そうに返事した。

そうして、これ以上は話をしたくないのか出された料理を静かに食べ始めた。

それから父親は苦笑いを浮かべながら、子供達を見ながらこう言った。

「そう言うわけだからちゃんと忘れずに」と言った後に彼は両端にあるフォークとナイフを持って食事を開始した。

それからルーネも先程まではしゃいでいたと裏腹に静かに食べ始めた。

(ここまで静かに食べる食卓って珍しいというかこれが普通かも…)と考えながらミレイナは自分の前にある哺乳瓶に手を伸ばした。

その時、頭の中に警告音が流れ始めた。

(何?こんなときに…)と心の中で文句を言いながら目の前にある哺乳瓶に“鑑定”をかけた。

その瞬間、鑑定結果にまさかなものが記されていた。


〈ミルクが入った哺乳瓶+下痢薬〉


(これ、赤ん坊が飲んだらショックで死んでしまうわ!)

そう気づいて、周りの人間を見回した。

両親と兄に関しては心の中を読んでも事に運んだ証拠はなかった。

でも、ここに赤ん坊にとって危険なものが入ってるのは何よりの証拠。

(まさか、こんな幼少の頃から危険な目に会うなんて…)

そう落胆してるときに母親がミレイナの様子が違うことに気づいて母親らしく話しかけてきた。

「ミレイナ、ミルク飲まないの?」

そう聞かれて自分からどう示すか迷っていると不意に母親の瞳が光った。

それは何かの魔法が発動したようなものだった。

(何をしたの?)と思ってると彼女の視界に入ってるものが何かを示してから、不意に哺乳瓶の方に手を伸ばした。

「これのことを危惧していたみたいね」と何かを把握したように言ってから不意にメイド達を呼んだ。

この動きに父親とルーネは不思議そうな表情を浮かべた。

「何かあったのか?」と父親が話しかけてみると彼女は哺乳瓶を手でゆらゆらさせながら返事した。

哺乳瓶これに妙なものが入っていたみたいで私の鑑定魔法を使って調べてみた。そしたら、下剤が入っていたのよ。使用人の体調管理のために持ってきたようだけど間違って入れるようじゃうちにいらないから」

そう冷たく言う彼女の言葉に密かに怒りが込められていた。

母親としての役割を初めて目の当たりした瞬間だった。

(おお…ここで母上として見せるのね)と関心していると、母親に呼び出されていたメイドと料理を作ったであろうシェフ達が集められた。

「今回、娘のミルクを作った者は申しでしよ」と言われたら数名のメイドが前に出た。

そしてその中にミレイナの衣装に熱を入れて着替えさせてくれた人もいた。

(あの人は見たところ病気に見えないし、他の人?)と言いながら前に出ている人を見つめた。

今回は簡易的なため名前は省略させて彼らの健康状態を見ていたがその中に誰も病気を持ってる人間はいなかった。

(この中にはいない……ってことは家族の誰か?)と思い耽ってる間に話は進んでいた。

「この中の誰かがこの子を殺そうとしたのは事実です。何か申し開きは?」

そう静かに口を開いたのはルーネだった。

ドスの聞いた冷たい声に憎悪に満ちこめて。

「それは…」と口開いたのは冷や汗をかいてるメイド・ウェリーだった。

他に前出た人々は疑心の目を彼女に向けていた。

(確か息子いたよね?まさか…)

これは、赤子の演技をしてる場合ではないから考え始め、自分の意思をどう伝えるかさらに考えた。

「はーうえ、あっえ待って…」と言いながら小さな頭を動かして彼女の方とルーネに向けた。

あないえいえ話してみて」というミレイナの言葉に促されウェリーは自分の事情を話した。

「本当に申し訳ありません。伯爵様、夫人様、御坊っちゃま、お嬢様。実は息子が謎の腹痛にあっていましてそれで…」

急ぎの際に腹痛薬もとい下剤を買ったのだろう。

(異世界の場合は医療発展はそこまでに至ってない…全ての病気は魔法で治せるからと考えている。だから回復魔法を持っていない人間はこうして薬を買うしかないのよ)

「なるほど、ならば貴方には一週間の謹慎を言い渡す」

そう下す父親は何処か優しさを含んでいた。

「お抱えの医者を連れていけ。紹介状も書いておく」

そう言った途端彼女の瞳が潤い始めて感謝泣きした。

「はぁ!ありがとうございます!」

そう言ってから彼女はその場を走るように去っていった。

それから無事解決したことで、メイドとシェフの数名は一度頭を下げてから去り、そして侍従長みたいな人が出てきて「それではお嬢様のミルク、作り直してきます」と言ってから母親の方へ近づいていきそれで、哺乳瓶を受け取った。

それからそそくさと行ってしまった。

後は三人の料理があってミレイナの前には何もない状態になってしまった。

「うーん、来るのまで待っていたらお腹が好きすぎて苦しんでしまうな」と父親が危惧していると不意にルーネが徐に椅子を引いてそれから何かを持ってミレイナに寄ってきた。

彼が持ってきたのは美味しそうなスープだった。

「僕のスープをあげます!」

(スープ?材料によっては私には無理だよ?)と危惧していると鑑定を使わずとも父親が答えてくれた。

「鳥のスープみたいだしぬるくしておけば飲めると思うよ」

そう言うと彼はすぐにテーブルの上に置いてそれから口の付けていないであろうスプーンを持ってきたが母親とミレイナの間に余ってる椅子がなかった。

おまけに慎重が足りないのか皿を置く腕の長さはあるのに彼女に運ぶ身長だけは足りなかった。

それで、最期にとった手段は母親に頼むことだった。

「母上…これ…ミレイナに飲ませてくれない?」と頼むと彼女は少し考えながらミレイナとスープを交互に見ながら、彼女は一度息を吐いて観念の意を示した。

「仕方ないわね」と言って彼女は椅子に座ってるミレイナを優しく抱っこして自分の膝の上に乗せた。

そして、自分の口の付けていないスプーンを右手で持ち、左手はミレイナを落とさないようにしっかり支えていた。

それから、スプーンでスープを一掬いしそして、赤ん坊が火傷しないように何度もそれに向けて息を吹き掛けた。

するとスプーンから昇っていた湯気はゆっくりと消えていき溢さず彼女の口許に当てた。

そして、ミレイナは何の疑いもせずそれに口を付けてススっと飲んでみた。

すると、喉越しと味覚に痺れのようなものが走った。

痺れというのは単なる比喩なる表現。

一から手作りであるため機械的な味はなく優しさが含まれたような味が舌で感じ取れた。

「ほわぁ~…」

(ただのスープなのにこんなに美味しいなんて…)

ふと、過去の自分の食事について思い出してしまった。



その頃は独り身でいたせいで味気のない料理を食べていただろう。

覚えてることといえばコンビニの弁当と間に合せで買ってきたスーパーのお総菜。

さらに栄養が偏っているカップラーメンが主だった。


そして今は家族がいるこの空間で暖かなスープを飲んで久し振りの美味に出会った。

そうしていると、ミレイナの瞳がうるうるし始めた。

(やばい、思わず涙が……)

しかし、赤ん坊の体なのでその衝動は止められない。

「あらあらこれは…」と母親が目を瞬かせながら言って、「ミレイナ!どうしたの!何で泣いてるの!?」とルーネが母親のドレスの裾を引っ張りながら状況を把握しようと詰め寄っていた。

それで、様子見をしていた父親が娘に向かってこんな質問をした。

「スープ不味かったのかい?」

そう聞くとミレイナは少し泣きじゃくりながら首を横に振った。

「ミレイナは何に感動したのか分からないけどとりあえず口にあってよかったよ」

これは、今まで暮らしてきた過去の自分のせいでもある。

こんなにスープだけで感動してしまうなんて自分でも恥ずかしく思えた。

しばらくしてミレイナは泣き止み、それから程なくして泣き疲れて眠ってしまった。

「おやおや、眠ってしまったようだな」

そう言いながらミレイナを抱き抱えようと母親の腕から取ろうとしたら彼女がそれを拒んだ。

ミレイナの事を大事に強く抱えた。

「私が送っていくわ…」と言って静かに席を立った。

それでルーネも後を追うとしたけど父親がそれを止めた。

「どうしたのですか?お父様…」と訪ねると彼は彼女の考えてることを尊重した。

「気にしなくて良い…これは彼女の問題でもあるのだから」







暗く仄かに光る蝋燭の飾り廊下を母親が歩きその腕の中に小さく寝息を立てる自分の娘であるミレイナを見つめていた。

「こんな小さな体なのに…」

そう呟いてから生まれてからこの数ヵ月一度も娘の元に行ってないことを思い出した。

それで自分が如何に子育てに関して怠惰であったことを早くて遅すぎるような後悔がやってきた。

「ある程度の地位のある貴族の親はこうして愛を知らずに生きるって良く聞くけれどルーネの時はそうはならないように努力したのに…」

ルーネの時はちゃんと母親として振る舞えたけど二人目を解任したときに何処か「疲れた」という言葉が脳裏に過ったのだ。

ルーネの世話をしてる朝の間にも茶会やお出掛けの招待の婦人達の手紙が引切り無しに来ていてそれを、懇切丁寧に断りの手紙を送った。

手紙を送る度に心の奥に小さくて強い痛みが走った。

そして、次第にこんな風に思ってしまった。


「なんで私がこんなことしないといけないの」


そんな言葉が大きく現れた。

それからどうしてか気持ちが何処か壊れたのか心の持ちようが変わり、貴族であることを誇りに思うような振る舞いになっていった。

子育てを疎かにしドレスやアクセサリーなどのジュエリーをひたすら買うような暮らしになっていった。

その様子は悪役夫人、そのもののようだった。

そして、来るべきお茶会やパーティーのために…。

しかし、そんなことは起きないだろう…。

自分の子供を見殺しにする所だったのだからな…。



現在に至っては今、反省の心が溢れていた。

「貴女は見抜いていたのかしら?」と答えるはずのない質問をした。

すると、言葉が彼女の耳元に触れそれがくすぐったく感じたのか身動みじろいだ。

そして小さく寝言を放った。

「しんいない…あい…なんて…」

その言葉に母親は目を見張った。

(まだ0歳なのにそんな思いを抱いてるなんて…酷い悪夢を見てるの…)

もしかしたら、ミレイナは最初から自分達の事を

そう不安を抱いた瞬間、彼女は決意した。

母親は静かにドアを開けて、彼女のベッドまでゆっくり近づいて静かに置いて布団を首元まで掛けてあげた。

それから、安心を抱いて欲しいと願うべく彼女のお腹を優しく右手でポンポンと叩いてあげた。

すると、ミレイナは優しさに触れてホッとし悪夢から脱したのか安心しきった表情を浮かべていた。

「ミレイナ、虫の良い私だけどちゃんと母親としてあげる。だから今は幸せな夢を……」と言ってから彼女の顔に近づいて額にキスをした。


それから、母親は静かな足取りで部屋を立ち去り音を立てないようにドアを閉めた。




その頃、ミレイナは夢を見ていた。

それも、前世の夢を………。





………続く


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