第21話 精鋭部隊らしいですわ
騎士団を無事に壊滅させた俺たちは、その後、平穏な日々を満喫していた。
「んん~。やっぱり平和が一番ですわね」
「そうでございますね。リコリス様」
今日も領主の屋敷でまったりしながら、アリスの淹れてくれた紅茶をみんなで堪能していた。
お茶会の顔ぶれは日によって変わるが、今日はアリスとミーリカ、ユーリカ姉妹、それとグレアが一緒であった。
グレアは最近メイベル率いる偵察部隊の一員となった青年で、遠距離でのテレパシーによって情報をやり取りすることができる。
彼と同じようにユーリィ、アイン、ヨーゼフも遠距離でのテレパシーを扱えることから、日替わりで砦と領主の屋敷、そして温泉宿に常駐して、監視を行っている。
彼らの役割はテレパシーによる連絡のため、見張り自体は別の人員が割り当てられているため、何もなければ、彼らは1日中自由に過ごせる。
特に、領主の屋敷の担当になる日は、こうして俺たちのお茶会に同席することになっており、彼らのモチベーションアップにつながっているということであった。
「さあさ、お菓子もたくさん用意してありますので、どんどん召し上がってくださいな」
お菓子を用意してくれたのはアリスたちだが、彼らが遠慮しないようにお菓子を勧める。
この日も、平穏に一日が終わる予定だったが――。
「大変です、リコリス様! 砦から敵影を発見したとの報告がありました!」
グレアの一言によって、俺の平穏な日々は終わりを告げたのだった。
さっそく砦に向かった俺たちは、全身をまばゆい銀色の鎧に包まれた騎士たちを見つけた。
人数こそ100名ほどだが、彼らの身に着けている鎧が、タダモノではない風格を醸し出していた。
「あれは……金獅子騎士団!」
「知っているのですか?! メイベル!」
「国王直属の精鋭騎士団でございます。全員優秀な人間でありながら、魔法抵抗力の高いミスリル製の鎧を身に着けている一騎当千の騎士たちでございます」
確かに強そうではあるが、一騎当千は言いすぎじゃないだろうか、などと考えていると、団長と思しき鎧が前に出てきた。
「リコリス・ローゼンバーグ! 貴様は王家の至宝たる騎士団に刃を向けた! それはすなわち王家に対する反逆である! よって貴様を打ち滅ぼす! 良いな!」
「良くはありませんわ。ワタクシ、何もしておりませんのよ。騎士団様も自爆、ププッ、されたようでございますし……」
「ぐぬぬ、貴様、我らを愚弄するか! 許せん、首を洗って待っていろ!」
「リコリス様、金獅子騎士団は総勢100名ほどですが……。どうやら彼らは他の騎士団が揃うまで待っているようです」
「準備できていないのに喧嘩を売ってくるなんて、なんと愚かな……。ですが、準備時間が取れたのは幸いです。こちらも、迎撃の準備を整えましょう」
向こうが猶予を与えてくれているので、俺たちも総力を結集することにした。
翌日、俺たちは領民全員に砦に集合してもらうことにした。
向かいの丘には、金獅子騎士団の精鋭100名に率いられて、王国の騎士団1000名ほどが整列していた。
「ふはは、我らだけでなく、他の騎士団も応援に駆けつけてくれた。これで貴様らも終わりだ!」
「あらあら、前回は散々でしたわね。今回は火元にはお気をつけくださいませ」
「何も対策をしていないと思ったか? やれっ!」
団長の指示によって、彼らの周りに風が吹き荒れる。
「ふはは、爆発前に雨のようなものが降ってきたという情報があったからな。これで前回と同じ手は喰らわんぞ!」
「そうですか、では、第一部隊の方、お願いしますわ!」
俺の号令に従って、第一部隊が上空にある塵を
集められた塵は瞬く間に巨大な岩ほどになって、地面に降り注ぐ。
巨大な隕石と化したそれは、当然ながら吹き荒れる風程度で防げるはずもなく、瞬く間に阿鼻叫喚の地獄と化していた。
しかし、金獅子騎士団は装備の違いからか、特に効いていないように見えた。
「クソッ、お前たち、怯むな! 全員突撃ィィィ!」
団長が大声で号令をかけると、先ほどまで混乱していた騎士たちが全員突撃してくる。
「甘いですわね。第二部隊の方、お願いしますわ!」
第二部隊は、あらかじめ地中に仕掛けた濃縮ウランを点火する。
地中で発生した大爆発は、あたり一帯に大地震を起こし、騎士たちの突撃を妨害する。
「くそっ、地震か?! なぜこんな時に!」
団長をはじめとして騎士団全員が地面に這いつくばる。
当然ながら、全員が馬から投げ出されていた。
「このまま畳みかけますわ。第三部隊の方、お願いしますわ」
第三部隊の人たちが電撃を放つ。
ミスリル製の鎧を着ている金獅子騎士団には効いていないが、それ以外の騎士たちを一瞬で戦闘不能にした。
「あとは、トドメですわ。アリス、続いてガイ、お願いしますわね」
アリスの姿がかき消えると、団長の後ろに現れる。
そして、包丁を振り回すと、瞬く間に団長が3枚におろされてしまった。
「料理、完了しました」
「おっしゃ、次は俺の番だな!」
ガイは砦から飛び降りると、いまだに態勢を立て直せていない騎士団に一閃する。
次の瞬間、金獅子騎士団は全員、上半身と下半身が真っ二つに分かれていた。
こうして、王国の精鋭たる金獅子騎士団だけでなく、王国の全騎士団が、この日、全滅したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます