第7話 教会が爆発してしまいましたわ
「まずは服を全て脱いでもらおうか。邪法を使う者は身体のどこかに入れ墨をすると聞いたことがあるからな!」
イヤらしく笑いながら下心全開の要求をしてくる二人に、俺は戸惑ったような表情を浮かべる。
「しかし……。ワタクシ、殿方に肌をさらすのは恥ずかしうございます。お嫁にいけなくなってしまいますわ」
「心配するでない。我らは神の使いである。さすれば、我らの目は神の目と同じであるからして、見られたところで何ら問題はない。むしろ、それを拒否することは邪法の使い手であるという証であるぞ」
俺は、何というエロゲ、と思いつつも、意を決したような表情を作り、服を脱いでいき下着姿になった。
「これ以上は……、お許しください!」
「ダメだ! その布切れの下に隠しているかもしれないではないか!」
俺は少し俯き加減になり、肩を震わせながら下着も脱いだ。
「よし、もっと良く見せてみろ!」
「そんな、恥ずかしいですわ……」
「んん、見つからんなぁ」
「それじゃあ、無実ということですわね!」
彼らが次に言うことは想像がついていたが、俺は安心したような表情を作った。
「いやいや、まだだ。見えるところにあるとは限らんからな!」
そう言って、俺の身体に触れようと二人が手を伸ばしてくる。
もはや、エロゲにお決まりの展開すぎて、吹き出しそうになるが、そろそろ潮時だろうと思い、
「手を後ろに組んで、跪け」
そう言うと、二人は俺に伸ばしかけていた手を引っ込めて、俺の言葉通りに後ろに組んで跪いた。
「な! どういうことだ?!」
「貴様! 本当に邪法を使うのか?」
二人とも俺が邪法を使うと思っていないのに難癖をつけてきていたらしい。
「あらあら、何を仰ってますのか、わかりかねますわね。ワタクシが邪法を使うと疑っていらしたのでしょう? 何をいまさら驚いているのやら……」
二人は言葉を詰まらせる。
「と言っても、これは邪法でもなんでもありませんわ。それも分からないようで、異端審問とか何の冗談なのやら……」
「何を言うか! 魔力無しの貴様が魔法を使ったのだ、邪法以外ありえぬだろう!」
「そうだそうだ! おとなしく俺たちを解放して、言うことを聞け。さもなければ教会が黙ってはいないぞ!」
この状況でも強気に吠えることに、俺は驚いていた。
「あらあら、あなた方は自分の生殺与奪がワタクシにあることを理解されていらっしゃらないのかしら? 一瞬であなた方をこうしたのですもの、あなた方を神の下へ送るなど容易いことですわ。――もっとも、あなた方が本当に神の下へ行けるかはわかりませんけどね。ふふっ」
俺が奥ゆかしく微笑みながら言うと、二人は震えあがった。
「ああ、勘違いしないでくださいまし。ワタクシ、あなた方を殺すつもりなど最初からありませんでしてよ。あなた方には私の無実を報告していただかなければなりませんからね」
「ふん、ならば今すぐ拘束を解いて、俺たちの言うことに従うことだな! 俺たちに身も心も捧げれば、大目に見てやらなくもない」
俺が下手に出た瞬間に大きく出る二人だった。
「あらあら、勘違いされてはいけませんよ。これから――あなた方に一つ仕掛けをいたしますわ。ワタクシの力を邪法と告げ口したら爆発する仕掛けをね」
「バカな、そんなことできるわけなかろう!」
「ふふふ、信じるのも信じないのもあなたがた次第ですわ、ワタクシはただ、それを行うのみ」
「くっ……」
俺の言葉に、2人は怒りの表情を滲ませる。
「まあ、せめてもの
「「……?」」
俺の説明を聞いても、何のことが分かっていない二人に心の中でため息をつく。
「まあ、あなた方のようなチンパン――頭の足りない方には理解が難しいかと存じますが、結論から申しますと、あなた方の身体が急激に膨張して破裂――水蒸気爆発を起こすという仕組みでございます」
そう言って、二人の
この世界の人間は、ほとんどが
俺みたいに分かっている人間は、そう言った仕掛けをされないように
「さて、これでいいでしょう。くれぐれも、戻ったらワタクシの無実を報告するのですよ」
「――ふざけるな!」
俺が拘束を解くと、審問官の一人がナイフを片手に俺に襲い掛かってきた。
「なん……だと?」
しかし、それが俺に届くより先に、彼の胸からナイフの刃が飛び出していた。
それを見て、俺はにっこりと微笑む。
「ありがとう、アリス」
「いえ、この程度、何の問題もありません。リコリス様」
俺に飛びかかろうとした直後、背後に回っていたアリスが彼の心臓をナイフで一突きにしていたのである。
彼が絶命したのを受けて、俺はニッコリと微笑みながら、もう一人に向き直った。
「さて、こちらの方は一足先に神の下へ向かわれたようでございますね。あなた様はいかがでしょうか?」
俺の言葉にかぶりを振った。
「い、いや、遠慮する! わかった、お前の無実を報告する。……だから見逃してくれ!」
無様に懇願する男に、追加で注文を付けることにした。
「そうですね、お仲間が戻られなければ不審に思われましょう。こちらはガベージの暴漢に襲撃されたとでもお伝えくださいませ」
俺がそう言って、微笑むとちぎれそうな勢いで首を縦に振っていた。
そして、逃げるようにして審問官は帰っていった。
その日、教会で大きな爆発があり、建物が半壊した。
「あらあら、きたねー花火でございますこと。ふふふ」
俺は頃合いを見て、ガベージ近くの丘の上で花火見物と洒落込んだ。
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