第4話 悲鳴

「悲鳴……だよな? とにかく急がないと」


 俺は女の子の声がした方向に走る。


 少なくとも緊急事態なのには変わりない。


 速度強化系の魔法があればいいのだが、生憎と持ち合わせていないのが悔やまれるな……。


「た、助けて!」


「大丈夫ですか!?」


 どうにか女の子の場所までやってくることができたが……しかし驚いたな。


 ――グギャオオオオオ!!


 女の子の目の前には、巨大なオーガの姿があった。


 オーガなんてこの森の中には出ないはずだが……ともあれこのゲームにはイレギュラーがたまに発生したりする。


 恐らく今回のオーガはそのイレギュラーが原因だろう。


「キクリ様!! 助けに来てくれたんですか……!!」


「え……俺の名前を知っているのか……?」


 一瞬驚いてしまうが、女の子の顔を見てすぐに思い出した。


 彼女はノクシア――俺、キクリの許嫁である。


 それこそ俺自身がモブキャラであるため、彼女自体は名前すらも必死で探さないと出てこないほどのモブだ。


 ともあれ――そんな話は後だ。


「ノクシア! 俺の後ろに隠れてくれ!」


「は、はい……!」


 敬語じゃなくてもいいよなと思い、彼女の名前を叫ぶ。


 ノクシアは慌てて俺の方に駆け寄ってきて、少し離れた場所に退避した。


「よし……オーガさんよ。ちょうど良いところに出てきてくれたな」


 俺はオーガを見据えてにやりと笑う。


 ちなみに相手はかなりの強敵だ。


 討伐ランクにしてはB。


 レベル11の俺が挑むにしては強めの敵ではあるが、問題はないだろう。


 このゲームは知識があればレベルが低くても勝てるように設定されている。


「《ファイア》」


 俺が唱えた瞬間、青色に変化した巨大な炎がオーガに直撃する。


 刹那、炎が形を変えたかと思えばオーガを包み込みながら爆裂した。


 ――ガゥゥゥゥ!?


 オーガは抵抗することもできずに、爆裂に巻き込まれて倒れた。


 よし……討伐完了である。


 ――――――――――――――――――

 レベルが上がりました。

 それに伴い、ステータスも上昇しました。


 レベル 11→23

 HP 30→53

 MP 25→45

 ――――――――――――――――――


 レベルもしっかり上がったな。


 このくらいのレベルであれば、独り立ちも余裕でできる程度である。


 やはり格上を倒すと一気に上がって楽だな。


「キクリ様ぁ!!」


「うおおお!?」


 突然ノクシアに押し倒されたかと思うと、ぎゅっと抱きしめられた。


 もう胸も当たっているし顔同士も接触してしまっている。


「ありがとうございます……ありがとうございます……!」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 あとがき


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弱小貴族に転生したアラサー、ゲーム知識を使って魔法を極めてみることにした~のんびり貴族生活を謳歌したいだけなのに、誰も放っておいてくれない件~ 夜分長文 @yukikaze_

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