第2話 《ファイア》を覚えて強化してみた
「魔術書が読みたいのかい? うーん……お前が魔法を使いたいと言い出すだなんてな。自由に持って行きなさい」
食事の最中に父上に聞いたところ、この家にも魔術書はあるようだった。
最初の最初で魔術書がなくて魔法を覚えることができませんでした……なんてオチは回避できたらしい。
父上から貰った魔術書を持って、俺は嬉々として庭に出てきた。
やはり貴族の家ということもあって、庭は十分に広い。
「まずは炎魔法を覚えたいな……基礎中の基礎だし簡単だといいな」
炎魔法は誰もが最初に覚える魔法の一つである。
一番簡単なのが《ファイア》。これはどんなに才能がなくても、余程のことがない限り覚えることができる。
俺は魔術書をめくって、
「うん。色々と書いてるけど、内容自体は簡単なものだ」
こういう専門書は難しいことを書いているのが当たり前だが、なんせ俺はこのゲームをやりこんでいる。
ある程度のことなら想像でも補完できるし、知識もあるから内容も理解できた。
「まずはやってみるか……! 的は……あの木でいいかな」
そう言って、俺は手のひらを木に向ける。
「《ファイア》」
俺が唱えると、ボンと言う音とともに炎の球が放たれた。
威力は……木の皮を焦がす程度である。
とはいえ、初級魔法なのだから当然の威力だ。
「なるほど。大体理解できた――本題はここからだな」
自分が魔法を使えることは分かったのだ。
ここからは応用の時間である。
魔法というのは、いわゆる魔法言語というもので形成されている。
文字の羅列が魔法を作り上げている……というのが魔法の基礎知識だ。
つまり、簡単な話文字の羅列を組み替えることで魔法はどんどん強化されていく。
どうやら父上から貰った魔術書には《ファイア》などの基礎魔法しか載っていないようではあるが――俺の知識なら更に上も目指すことができると思う。
「よっと」
俺が手のひらを空にかざすと、魔法の詳細が出てきた。
そこに触れて、《ファイア》に色々と追加の要素を加えていく。
と言っても、主に威力上昇のものではあるが。
………………よし、これで少しは威力が上がったかな。
「まあ、俺のレベル的にはこれが限界かな。レベルが低いから、多分これ以上の威力にしたら魔力切れでぶっ倒れるだろうし」
そう言って、俺はもう一度手のひらを木に向ける。
「《ファイア》」
先程と同じ
手のひらに展開された赤い魔法陣がきらりと輝き、轟音ともに巨大な炎を放った。
魔法が直撃した木はめらめらと燃え、最終的に灰となってボロボロになってしまった。
「よし、完璧だ。俺のゲーム知識はしっかり使えるらしい」
まだまだ威力は弱いと思うけど、初めてにしては上出来である。
よし、せっかくだから――魔物狩りでもしてみるか。
あ……でも父上には許可を取っておいた方がいいよな。
そう思った俺は踵を返す――だが、後ろを見てみると父上が様子を見に来ていたようだった。
ならちょうどいいな。魔物狩りに行って良いかさっさと許可を取ってしまおう。
「父上! 俺、今覚えた魔法を使って魔物狩りをしてみたいと思っているのですが……ってどうしました?」
何故か父上が愕然とした様子で俺を見てきていた。
何か変なことでも行ってしまっただろうか。
俺は半ば不安になりながら様子を見ていたのだが……。
「キクリ……お前、今どんな魔法を使ったんだ……?」
どうやら俺が魔法を使っていたところを見ていたようだ。
でも……別に驚くようなものはないしな。
「えっと……ただの《ファイア》ですけど……」
そう言うと、父上は少しばかり沈黙する。
だが、すぐに慌てた様子で口を開いた。
「……天才だ! 私の息子は天才かもしれない!」
なんだか嬉しそうに俺の手を父上が握ってきた。
天才って大げさな……まあ初めて覚えた魔法だし、きっと父上は俺を褒めて伸ばそうとしているんだろう。
「もちろん魔物狩りはしてきていいぞ! 行ってこい!」
「はい! ありがとうございます!」
よし! ひとまず許可は貰えたから、早速魔物を狩りに行ってみるか!
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