第3章 悪役令嬢、女共に見せつける

第11話 悪役令嬢、勝利


 翌週、星野たちは大変なことになった。

 マリーさんはあくまでも「動画を撮るだけ」だったが、他に様子を撮影していた生徒からいじめ動画が流出したのだ。


 星野たちの名前や学校名が晒されただけではなく、そこからSNSで大炎上。当初、学校側は停学で済ませる予定だったが、1週間後に彼らが退学になったとの噂が流れた。


 本当のところ、俺には彼らが退学になったのか自主退学したのかはわからない。ただ、形だけの謝罪をしに、両親と俺の家に来たことだけは覚えている。怪我の治療費と慰謝料? を姉ちゃんが受け取って結局警察には行かないことになった。


***


「星野くん、どうして弟にこんなことしたの?」


 姉ちゃんの質問に星野は小さな声で言った。


「羨ましかった……から」


「え?」


「エマさんみたいなお姉さんがいて、親がいなくて自由でうらやましかったから」


 そこで、星野の父親が星野をぶん殴り彼は派手に鼻血を出して泣き出した。それを俺は眺めながら、マリーさんが言ってたことが正しかったことにストンと胸がスッキリするような気持ちになった。



***


「ジン、怪我の方は大丈夫?」


「あぁ、うん。だいぶ。マリーさんのおかげで学校生活もちょっぴりマシになったよ。いじめの対象では無くなったし……星野たちは引っ越すらしいし」


「そうなの? では学校の外でも安心ですわね。ワタクシたちの勝利ですわ〜!」


 コーラの入ったグラスで乾杯をしてぐいっと飲み干す。ちょっと代償は払ったけれど、中学時代からの悪夢は消えたのだ。星野たちが制裁されて、しばらくは俺を虐めようという人間はいなくなるだろう。


 ただ、静かに学校生活を送りたい。


 そんな俺のちっぽけな夢が叶う日がすぐそこまで来ているのだ。

 それもこれも、目の前にいる悪役令嬢のおかげ……だ。悪には悪をなんて言ったものではあるが、俺では思いつかないような計画を彼女は成功させてしまったんだ。


「それではジン。明日からはあの秦野という女の子たちを見返してやる番、ですわよ。エマ、ちょっと良いかしら?」


 休日ということでゆっくりしていた姉ちゃんは突然呼ばれて体を起こした。


「どうかしたのマリーちゃん」


「ジンにお小遣いをいただけるかしら? 彼を美容院に連れて行きたいの!」


 美容院。

 それは俺にとってあまり行ったことのない場所だ。というのも、基本的には千円カットで済ませていたし、俺のような人間がおしゃれをしても仕方がないと思っているからだ。


「いいけど、マリーさんもご一緒してきたら?」


「まぁ、それは良い提案ねエマ。ありがとう」


 マリーさんの生活費やお小遣いは彼女の実家(という体の女神様が用意した何か)からお金が振り込まれているらしい。からして、うちの家系には問題ないだろう。

 そのうえ、星野たちからの示談金? で少しだけ余裕がある。


「それじゃあ、私の方で予約はとっておきますわね」


「いつの間に?!」


「あら、昨夜からずっとこのスマホについてお勉強しておりましたの。おフランスではこんなにハイテクなものは珍しいですから……もうエスエヌエスもお手のものですことよ!」


 彼女が見せてくれた画面には写真投稿SNSの画面がうつされていた。アイコンは、彼女の顔面、既にエモい感じの写真がいくつか投稿されている。


「すげぇ〜」


「最近では、ライブ配信をするのも流行しているんですって。ねぇジン、ワタクシは人気が出るかしら?」


「え、やるの?」


「だってワタクシ、目立つのが大好きですの!」


 苦笑いをする俺、本気で闘志を燃やすマリーさん。姉ちゃんは微笑ましくマリーさんを見守るように笑顔になる。


「さぁ、今度はいじめてきた女の子たちを見返そう! ですわ〜!」


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