Side Mitake
現実世界の午前2時:ゲーム内にて
-ドゴォォォン!ザシュ!バァァァン!-
-フンッ!ハァァ!-
「よし!これで今回のイベントもクリア!やっぱり"ニーナ"は神ゲー!」
黒髪ロングのアバターが言う。彼女はダウンロード数3000万人越えの超人気ゲーム
『ニルヴァーナ』の最古参プレイヤー、"BB"である。
常に世界ランキングの上位に位置しており、ある程度このゲームの知識があるものならば知らない人はいないほどのプレイヤーだ。
「あ!今日始業式じゃん!もう寝ないと!」
-ゲームを終了しますか-
-はい-
__________________
「ふぅ、やっぱりゲームって楽しいなぁ。彼もゲーム好きだったりしないかなぁ…」
「…よし!今日頑張って話しかけるぞー!がんばれ私!」
__________________
私の名前は美竹菜奈。今日から高校2年生。
周りからはよく美竹さんと言われる、ただ一人の友達を除いて。
「なっちゃん!おはよー!久しぶりー!」
「おはよう、琴音ちゃん」
彼女、"矢吹琴音"は私の唯一と言ってもいい友達で、周りからは"コミュ力の鬼"と言われている。私は中学の頃いわゆる陰キャで前髪で目はほとんど見えず、友達が全く出来なかったのだが、一匹狼が好きと言うわけではなかったので、いわゆる高校デビューを果たしたのである。
髪をサラサラに、前髪は整え、背筋はピンと、会話はハキハキとするようにして、当たり障りのない優しい性格を意識して、今の私が出来上がったわけである。だがコミュ力だけは、入学したてでそんな急に変われる訳はなく、話しかけてくれた琴音ちゃんからコミュニケーションの仕方を教えてもらったり、今では色々相談に乗ってもらったりしている。
「やっぱりなっちゃんは視線集めるね〜。流石!学校一の人気者!」
「はは…そうだね…」
"学校一の人気者"とよく揶揄されるが私にしてみれば迷惑極まりないと言ったところだ。
友達を作ろうと高校デビューしたのに、憧れの対象的なものになってしまっているのか、誰も友達になんてなってくれないし、あわよくば一緒にゲームとか出来たらなぁとか思ってたのに、唯一の友達の琴音ちゃんはゲームしてないし、私としては
(高校デビュー失敗しちゃったな〜)
と思っている。
そんな私も今日から高校2年生。クラス発表のとき、何よりも嬉しいことがあった。
気になっている人と同じクラスになれたのだ。しかも一つ前の席!名前は舞元奏也くん!
彼がゲームをしているかは分からないけど、とりあえず友達になれるように頑張るぞー!
「なっちゃん、どうしたの?なんかやけに嬉しそうだけど?」
「あ、いや!なんでもないよ!」
「な~んかあやしいなぁ、あ、もしかしてあの人のこと考えてたり?」
「ちょっと、声が大きいよ!」
一応琴音ちゃんには、私の恋愛相談にも乗ってもらっているのでこのこともよく知っている。
「それにしても、学校一の人気者に好きな人がいるなんて周りの人たちが知ったらどんな反応するんだろうね~」
「べ、別にまだ好きって程じゃ...」
「いや~恋する乙女はかわいいね~」
「もー!それよりそろそろ体育館行くよ!」
「はーい♪」
今日は体育館で行われる始業式があるので、廊下や下駄箱が混まないうちに行くことにした。体育館用のシューズをもって琴音ちゃんと一緒に廊下に出る。体育館に向かいながらさっきの会話の続きを琴音ちゃんがしてくる。
「それにしても、どうするのさ?何にもしないまんまじゃ変わんないよ?」
「そうなんだけどね、やっぱり緊張しちゃって...」
今まで何度か彼に話しかけようとしたことがあるが、いざとなると緊張してしまって結局すべて失敗に終わっている。
「じゃあさ、あれに誘ってみたらいいじゃん!あの…なんだっけ。そう!ニーナ!」
「それができたら困らないんだけどね。そもそも彼がゲームしてるかも分からないし…」
ニーナに誘ってみるというプランを何度か考えたことはある。ニーナは超人気のゲームだし、彼がやっている可能性は十分にある。でも、もしやってなかったら?『なんだ、美竹さんってゲームオタクだったんだ。』って思われてしまう。自分でいうのもなんだが私は結構慎重なほうだ。だからこそ後悔していることも多々あるのだが。
「あ、そうだ。始業式終わったらきっと自己紹介あると思うからそこでゲームやってるか確認したらいいじゃん。多分趣味の紹介とかあるでしょ。」
そうか。その手があった。彼に直接話をせずに趣味を知る方法。そうとなれば、自己紹介の時に最初の人が趣味のフォーマットを作ってくれることを願おう。
そうこうしているうちに体育館に着いた。早めについてしまったので席はガラガラだった。
席についてしばらく待っていると、ほかの生徒たちもぞろぞろやってくる。けど、隣の席はいっこうに埋まらなかった。
(舞元くん、遅いな...)
始まる五分前になっても彼は来ない。教室には確かにいたはずなんだけど。
そう思いながら、残り一分くらいになった時、二人の人影が入口のほうに見えた。
彼だ。その隣には...彼の友達の天野くんかな?遅れてきたことによる視線が痛かったのか、彼らはそそくさと自分たちの席についていった。ずいぶん急いでやって来たのか隣に来た舞元くんは汗びっしょりだった。
(これは...!好感度を上げるチャンス!)
とっさにそう思った私は、彼に対する気遣いの言葉をかけることにした。
「汗すごいね、大丈夫?」
まずは現状のフォローから。自分の頭をフル回転させて考える。
「大丈夫大丈夫。こんなの日常茶飯事だから」
彼は私に気を使わせまいとしてくれているらしい。あくまで私の見解だけど。
「でも、汗すごいよ?ハンカチ貸そうか?」
それでも私は食らいつく。けど、私は初めてプライベートでちゃんと話せたことに浮かれてしまっていたのか判断が鈍っていた。
「いや、大丈夫」
そりゃそうだ。そもそも話したことのない異性からいきなり『ハンカチ貸そうか?』と言われて常人が了承するわけがない。きっと私が彼の立場でも申し訳が立たなくなってしまうだろう。想定の範囲内ではあったが、冷静さを欠き始めていた私はかなりへこんでしまった。
結局、校歌斉唱までへこみ続けるへこみぶりを見せつけ、極小の声で歌っていた。
ふと横を見てみると、舞元くんがこっちを見ていた。何を思っていたのか目が合った瞬間に目を逸らされたけど、一瞬見えた目から明らかに嫌悪の目ではないことが感じられて、嫌われてはいないのかなと少し安心した。
始業式が終わって、教室に戻り係決めが行われる。
「次、生徒会発言委員をしたいものは挙手してください」
【100PV突破!】平凡な僕と特別な君はゲームの中で てらてら @terateraaaaaaaaaaa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【100PV突破!】平凡な僕と特別な君はゲームの中での最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます