過去のタイムカプセル

海湖水

過去のタイムカプセル

 「俺ってこんなの書いてたのか」


 自分の小説の設定資料をあさっていると見つけた、昔書いていた小説のプロット。

 つい、昔の自分が考えていた小説はどんなものだったのか、気になって覗いてしまった。


 「昔は王道なファンタジー系を書いてたんだなぁ。つい最近は現代的なファンタジーとかが多いから忘れてたよ」


 目を通していると、どんどん思い出す、この小説を書いていたころの記憶。

 あの時は自分も随分と若くて、自信に満ち溢れていて、思いついたアイデアがあれば、机に向かって書き留めていたものだ。

 そうして記憶を掘り返していると、一人の友人のことを思い出した。

 彼は今も元気にやっているのだろうか。もう最近は会うことも少なくなってしまった。昔は時間さえあれば、小説について語り合ったのだが。


 「久しぶりに連絡を取ってみるか」


 そんなことを思いながら、俺はLINEを開いた。友人欄の下の方へとスクロールしていくと、彼の名前があった。

 

 『来週、○〇で会わない?』


 返信は帰ってこない。そりゃそうだ。つい最近は全く連絡していないのだから、返信は遅くて当然だろう。


 「しょうがないか。よし、資料の整理でもするか……」


 資料の整理を始めてから一時間後、スマホを覗いてみると、彼からの着信があった。


 『OK』


 そう一言だけ書かれている彼の返信には、何故かとても懐かしさを与えられた。

 俺は、それを見ると資料の整理に戻るのだった。



 「今日であってるよな?さすがに来ないとかないよな……」


 約束を取り付けてから一週間後、俺は約束場所で不安に暮れていた。

 もともと、小説以外では大きな接点がなかったのもあって、屈指の親友という印象はない。それがより、本当に来るかどうかを不明瞭にしていた。


 「……来ないな。今日、ここで集合とは伝えたんだけど……って、あれ?」


 LINEに彼からのメッセージが届いていることに気づいた。俺はすぐに、彼が送ってきた文章を読む。


 『久しぶり。お前に借りてたモノは返しておくよ。あと、小説書くの、頑張れよ』


 彼から送られてきた文章の内容は、このようなものだった。

 なにが久しぶりなのだろうか。まだこちらは姿すら視認てきていないのだが。

 そんなことを考えながらLINEを確認すると、さらに自分への指示が送られていた。


 『銅像の横に借りてたモノは置いてる。貸してくれてありがとうな。あと、俺は体調悪いから帰るわ』


 体調が悪いのならもっと早く教えてくれればよかったのに。

 そんなことを思いながら、指示に従い銅像の横に向かうと、紙袋が置いてあった。

 紙袋の中身を確認すると、いくつかの本と、数枚の紙が入れてあった。


 「この紙って……プロットか。いつのやつだよ……」


 思い出した。あいつにプロットの一部を預けてたんだっけ。中に入っているプロットは丁寧にまとめられており、折れの一つもなかった。今まで大切に管理されていたのがわかるような見た目だった。


 「あーあ……、整理するモンが増えちまったじゃねえか」


 俺は友人から渡された、過去の思い出を抱えると、家の方向へ足を向けた。


 

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