その魔王、元カノにつき

恥目司

再会は突然に

突然だが、俺は異世界から転生してきた勇者だ。

この魔王城の玉座の前で魔王との決戦を控えている訳だ。

「出てこい魔王!!俺が相手だ!!」


 俺の叫びが城の中にこだまする。


 その時だった。

「ふはははははは」

 無理にボイチェンかけたような低声が響く。

 黒い影が俺の前に降りてきた。

 後ろ姿でも圧倒される威圧……やはり魔王、ただものじゃない……!!


「ふっふっふ。よく来たな、勇者よ……大変ご苦労だった。いや、冗談とかじゃなくて本当に。だが、ここであったが百年目!!お前を潰してやる!!」

「なんかセリフとしておかしくない?」

「……とにかく!!お前をここで倒すんだよ!!」


 マントを片手でバッと広げて振り返る。


 うわ、カッコいい。俺もやりたい。

 って、そんな事言ってる場合じゃない!!

 俺は背負っていた剣を構える。


「こい!!魔王!!」

「ふははははは!!!!」

 魔王は手を前に出して赤い魔法陣を展開する。

「【燃えろ】!!」

 魔法陣の中から燃え盛る火球が飛び出す。

 すかさず、俺は避けたが火球は地面を抉り爆ぜた。


 その爆風に乗って、一気に距離を詰め寄る。

「うおおおおおおお!!!!!」

 渾身の剣を魔王に振るう。

「【阻め】!!」

しかし、魔王の詠唱で地面から生えた壁によって阻まれる。


「ふはははははは」

「く……強いな」

 やはり魔王。一筋縄ではいかない存在だ。


「ふはははははははは」

 というか、コイツずっと高笑いしかしないぞ!!気持ち悪っ!!

「……ふふふふふ」

「笑い方変えたってムダだぞ!!」

 違和感を持ちながらも剣を魔王に向けて振る。

「【吹き飛べ】!!」

 しかし、魔王の繰り出す魔法で間合いを離される一方。

「くそ!!ジリ貧!!」

 ヤケクソ気味に剣を投げ飛ばす!!

 弧線を描きながら、魔王の仮面を割ることに成功した。よっしゃあ!!


 ピシッと魔王の仮面にひびが入る。

 ひびは徐々に広がっていき、仮面が割れた。


 いや、待て。あの顔どこかで見た事がある。

 当の魔王も俺の顔を見て硬直している。

 仮面の中は少女の顔だった。


「……え?」

「あ」

「え?」


 俺は、あの子を知っている。

「え?……なんでここに?」


 なにせ彼女は……俺の元カノだ。

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その魔王、元カノにつき 恥目司 @hajimetsukasa

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