第277話 番外編 派遣魔法でも倒せない敵
現在、俺を苦しめている最大の敵、そいつはスギ花粉だ。
花粉アレルギーのスギ花粉。
こいつのせいで俺はアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎の真っ只中だ。
かいかいかい…目が痒いぃぃぃ。
掻いたらダメだ、掻けば奴の思う壺だ。俺は掻かないぞ?
でも、痒いぞぉぉぉぉ。
一応、棚橋ドクターに目薬は出してもらった。
魔法でどうにかならないもんかな……。
リアルステータスの魔法一覧を開いて考える。
怪我人は『ヒール』で回復。
毒なら『キュアポイズン』。
死んだ直後なら『リザレクション』で復活。
ゾンビなら『ターンアンデッド』で完全浄化。
ゾンビ化最中なら派遣魔法の『清掃』で菌を一掃。
そう、菌を一掃。菌ならね。
『清掃』は、名前こそ清掃だが、ゴミやホコリの除去は出来ない。
ただし何故か、ホコリの中のダニは除去する。
人体にあだなすモノを『敵』と見做しているのだろうか?身体(もしくは空間)からダニーを清掃する。
意外だったのは、風邪やインフルエンザには無効だった。あと水虫も。
菌は菌でも奴らは人間と仲良くしたい菌だ。こっちは仲良くしたくないが。残念ながら『敵』とみなされなかったのだろうか?
そして、花粉アレルギー(スギ花粉)にも効かなかった。
うん。ただの花粉だからな。敵でもなければ悪気もない。と言うかこっちが吸い込んじゃっただけであちらから侵入してきたわけでもないからな。
もしもスギ花粉が敵なら、マップに赤く映るのだろうか?
あれ?それじゃダニーも赤く映るのか?
「映りますよ?」
棚橋ドクターにサラっと言われた。
驚いた。ダニーはマップに映るんか。
「まぁかなり小さいので肉眼だと判別は難しいかも知れませんね」
え……それって、マップの意味が……。
異世界にいた10年は向こうに杉の木が無かったのか、アレルギー症状は起きなかったのですっかり忘れていた。
俺は結構重度の花粉症を患っていたのだ。
この世界、日本がボロボロになり花粉症も滅びたかと思いきや、残った山にまだ杉の木は生きていたようだ。
ぶあっぐじょおおおんんん!
……ふぁっしょぉぉん……ふぁっしょぉぉん……
俺のくしゃみが
「父さん、あっちの山とこっちの山にも父さんと同じくしゃみをする人がいる」
「いや、それは
「こだま?」
「俺のくしゃみが山にぶつかって跳ね返った音だ」
「す、すっげぇぇぇぇ! 父さんのくしゃみ魔法があんな遠くの山に直撃して跳ね返るんだ!
いや、魔法じゃないぞ。木霊だ……。
てか何だよ、くしゃみ魔法って。
いやそれ以前に
そして、そんなキラキラした目で俺の鼻を見るな!
「ぶぇ、ぶっ、べっぐしょおおおおおお!べくしょ!べぐしょ!」
べっしょぉ……べっしょ………
完
(もしかするとどこかのエピソードに似たモノを書いたかも……段々そんな気がしてきた)
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